ニュース速報

ワールド

政府のこども政策、少子化反転へ3年間で集中取り組み 財源が焦点

2023年03月31日(金)18時02分

 3月31日、小倉将信こども政策担当相は、児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などを盛り込んだ、子ども・子育て政策のたたき台を発表した。写真は都内で2022年8月撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

[東京 31日 ロイター] - 小倉将信こども政策担当相は31日、児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などを盛り込んだ、子ども・子育て政策のたたき台を発表した。2024年度からの3年間を集中取り組み期間とし、少子化傾向の反転を目指す。政府は岸田文雄首相のもとに設置する新たな会議体で検討を深めていくが、予算規模や財源が今後の焦点となる。

2030年代に入れば日本の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化は歯止めの効かない状況になるため、これからの6、7年が少子化傾向の反転に向けたラストチャンスとなる。今後3年で優先的に取り組む対策を「こども・子育て支援加速化プラン」としてまとめ、予算措置や法改正などを進める。

結婚や子育ての将来展望が描けるよう、若い世代の所得を増やし、雇用を安定させていくことが「1丁目1番地」となる。児童手当は所得制限を撤廃して支給期間を高校まで延長するとともに、多子世帯を手当てする金額や制度を検討する。

住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローン(「フラット35」)については、多子世帯に特に配慮しつつ、支援の充実を図る。

相対的に対応が手薄となっている妊娠・出産期から2歳までの支援も強化する。2026年度の診療報酬改定をにらんで出産費用の保険適用の導入などを検討する。

子ども・子育て世帯へのサービスでは、幼児教育・保育の質の向上を目指すほか、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる新たな通園給付の創設を検討する。子育ての精神的な負担感や不公平感を緩和するため、男性の育休取得率の引き上げや、育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化することなども盛り込んだ。

小倉担当相は同日開いた会見で、制度のかつてない拡充や、長年の課題解決、時代に合わせた発想の転換など、従来とは次元の異なる少子化対策だと説明。今後、今回発表したパッケージをベースに政策を練りこみ、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示する方針だとした。

<予算規模、小倉担当相「現時点で正確に言えない」>

岸田首相はこれまで、政策の中身を詰めないうちに子ども・子育て予算の倍増の基準や時期を話すのは適当ではないとしてきた。ただ、今後は予算規模や財源の議論が本格化していく。

小倉担当相は、今回のたたき台は必要な政策を整理したものであり、この先、具体的な制度設計のもとでそれぞれの予算が確定されていくため、現時点で予算の総額規模について「正確に言えない」と語った。

自民党は29日、少子化対策に関する論点整理を小倉担当相に提出した。内容は59項目に上り、30日付日本経済新聞は、必要な予算総額について自民党幹部が年8兆円程度に及ぶと試算している、と伝えた。

鈴木俊一財務相は31日午前の閣議後会見で、少子化対策の財源について「恒久的な政策には裏付けとなる恒久的な財源が必要」と指摘。「必要な安定財源については国民各層の理解を得ながら、社会全体での負担のあり方を含め幅広く検討を進める必要がある」と語った。

(杉山健太郎)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易協議で大きな進展とベセント長官、12日に詳

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中