ニュース速報

ワールド

焦点:トランプ氏発言に広がる懸念、米中デカップリングの現実味

2020年06月27日(土)07時42分

 6月23日、トランプ米大統領が先週、中国との「完全なデカップリング(切り離し)」に言及して以降、複数の政権高官が火消しのコメントに走るなど、波紋が広がっている。メリーランド州のアンドルーズ空軍基地で撮影(2020年 ロイター/Carlos Barria)

David Lawder

[ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米大統領が先週、中国との「完全なデカップリング(切り離し)」に言及して以降、複数の政権高官が火消しのコメントに走るなど、波紋が広がっている。もっとも、勇ましい発言は厳しい現実の壁にぶつかりつつある。なぜなら中国による米国製品輸入や米企業の対中投資は増え続けており、市場は米中のデカップリングを懸念しているからだ。

22日夜にはナバロ大統領補佐官がFOXニュースのインタビューで米中貿易協議の第1段階合意は「終わった」と発言し、アジア市場時間帯で株式先物が下落してボラティリティー・インデックス(VIX)が跳ね上がったが、同日中にすぐに同氏がこれを撤回。新型コロナウイルスの感染拡大についての米中間の信頼欠如に触れたのが真意だと釈明した。トランプ氏自身がツイッターで、第1段階合意は「無傷」だと強調して見せたからだ。

クドロー国家経済会議(NEC)委員長は23日、中国が貿易合意の面で責務を果たしていると評価した。

そもそも騒ぎの発端となったトランプ氏の前週の発言は、米中のデカップリングが現実的とは思わないという趣旨のライトハイザー通商代表の議会証言を、全面的に否定したものだ。背景には、中国に対する強硬姿勢を選対陣営が再選戦略の柱の1つに据えているという基本的な事情がある。

だがトランプ氏が発したメッセージの一部、つまり米国は最大のサプライヤーである中国とたもとを分かつことができるし、積極的にそうするという考え方は、地に足がついていない。

実際米中貿易は、新型コロナウイルス感染拡大で一時的に落ち込んだ後、拡大を続けている。米商務省センサス局によると、米国の対中輸出は2月に68億ドルと10年ぶりの低水準だったものの、4月は86億ドルに増加。中国からの輸入も、11年ぶりの低さだった3月の198億ドルから311億ドルに増えた。

米農務省のデータを見ると、4月の中国向け大豆輸出は42万3891トンと、20万8505トンだった3月の2倍以上に膨らんだ。

こうした中でライトハイザー氏やポンペオ国務長官、ムニューシン財務長官といった政権高官は最近、中国が米国の農産品や工業生産などを追加購入するという第1段階合意を守るつもりがあると相次いで請け合っている。

ポンペオ氏は23日のラジオ番組で新たな冷戦についての見解を聞かれると、米経済と中国の結びつきは、旧ソ連と比べてはるかに強いと指摘。「われわれはその事情を踏まえて考えなければならない。米国の経済成長と繁栄は現在、中国経済と深く絡み合っているからだ」と語り、トランプ氏は米国の利益を守る決意だとも強調した。

一方ムニューシン氏は、ブルームバーグとインベスコが開催したイベントで、米企業が中国で公平な競争ができない場合には、米中のデカップリングが起こり得ると述べた。

米中貿易協議に詳しい関係者は、ナバロ氏の発言は単に口が滑っただけで、同氏自身の従来からの対中強硬姿勢が反映されたものであり、トランプ政権の見解ではないと釈明した。

この関係者の話では、中国政府の複数の高官は、ここ数カ月新型コロナ問題で減少していた米国からの輸入が6月には劇的に増加すると示唆している。

ロディアムグループが最近公表したリポートによると、今年第1・四半期に米企業が発表した中国向け新規直接投資の規模は23億ドルだった。新型コロナ感染拡大があってもなお昨年の四半期平均よりやや少ないだけで、中国における足場を縮小しようとしている米企業がほとんど見当たらないことが分かる。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーで通商問題専門家のビル・ラインシュ氏は、米中経済が足かけ20年間、手を取り合って成長してきた以上、デカップリングは簡単に実現できないと警告する。

同氏は「中国で中国市場向けサービス事業をするつもりなら、これからも現地にとどまるだろう。国外からサービスは展開できないからだ。トランプ氏が全ての企業に米国に戻れと命令するのは不可能だ。各企業は合理的、経済的な判断を下すことになるからだ」と解説している。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪外相、イランでの軍事活動に不参加を表明

ワールド

ホルムズ海峡の事実上の封鎖、世界の石油市場に重大な

ビジネス

UBS、エルモッティCEOの任期延長を計画=スイス

ビジネス

午前の日経平均は反落、米・イスラエルのイラン攻撃を
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 6
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 9
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 10
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中