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アングル:南アフリカ新党首誕生、市場は「浮かれ過ぎ」の声

2017年12月21日(木)09時30分

 12月19日、南アフリカの与党、アフリカ民族会議(ANC)の新党首にラマポーザ副大統領が選出されたことを受け、金融市場は浮かれている。写真は4月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)

[ロンドン 19日 ロイター] - 南アフリカの与党、アフリカ民族会議(ANC)の新党首にラマポーザ副大統領が選出されたことを受け、金融市場は浮かれている。

だがそうした熱狂は、ラマポーザ氏がこれから取り組む必要がある経済の立て直しと、深く分断化された社会の再生といった厳しい課題を直視していない証拠かもしれない、と複数の資産運用担当者は警告している。

ラマポーザ氏の党首選勝利は大方の予想通りだったが、通貨ランドは14日以降対ドルで7%上昇し、南アフリカ国債は同じ期間に利回りが58ベーシスポイント(bp)下がった。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは14日引値段階から約16bp縮小、同国の政治経済の状況を知る1つの目安とされる銀行株は19日に8%値上がりした。

スキャンダルまみれのズマ大統領に代わり、ラマポーザ氏が2019年の総選挙を経て次期大統領になる公算が大きくなったことで、南アフリカが良くなると考えられている。

それでも多くの関係者は、市場の反応が行き過ぎだと認める。JPモルガンのアナリスト陣は、南アフリカの主要輸出品である金とプラチナの相場軟化や他の新興市場国通貨の最近の値動きに基づき、ランドは9─11%「割高化」したと分析している。

パインブリッジ・インベストメンツのシニア・ポートフォリオマネジャー、アンデルス・フェーゲマン氏は「国内(債券)市場に目を向けると、今広がっている安心感は恐らくファンダメンタルズでは正当化できない。構造的な脆弱性は強固に定着しており、そう簡単に払しょくされない」と指摘。1%に満たない成長率や根強い物価高、28%という高失業率、政府支出拡大、国営企業の資本不足といった問題は、なおズマ氏が大統領の座にある来年中に片付けるのは難しいとした上で「政治の機能不全をもたらしかねず、それこそがリスクだ」と述べた。

アクサ・インベストメント・マネジャーズの新興国債責任者サイレシュ・ラッド氏も、ラマポーザ氏がANC党首になったからといって、南アフリカを「アンダーウエート」とする考えは変えていない。

ラッド氏によると、南アフリカにはギガバ財務相が10月に表明した巨額の財政赤字問題が引き続き存在しており、ラマポーザ氏は事態を一変させる要素(ゲームチェンジャー)ではないという。

ラマポーザ氏の党首選勝利に伴う市場のはしゃぎぶりは、先月南アフリカの格下げを見送ったムーディーズが、来年初めの次回の格付け検討でも据え置きを決めるのではないかとの希望的観測が含まれている。

同氏が約束した改革を実行すれば、最終的に投資適格級の格付けを取り戻せるとの期待も一部にある。

とはいえラマポーザ氏が僅差で勝利したことや、汚職のまん延などを考慮すれば、南アフリカの政治経済が改善するのは今後さらに困難になるとの予想が大勢だ。

政治コンサルティング会社ユーラシアは、選挙が近づいているためANCはさらに左傾化し、来年半ばまでに格付け引き上げへの十分な足場固めができなくなると見込んでいる。

(Karin Strohecker、Claire Milhench記者)

ロイター
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