ニュース速報
ビジネス

米政権、日鉄・USスチール合併に懸念 中国の過剰供給巡り

2024年09月06日(金)13時01分

 日本製鉄によるUSスチール買収計画について、バイデン米政権が日鉄に対し、米鉄鋼業に打撃を与え、国家安全保障上のリスクもたらすと8月31日付の書簡で伝えたことが複数の関係者の話で分かった。写真はUSスチールの工場。米ミシガン州で2019年9月撮影(2024年 ロイター/Rebecca Cook)

Alexandra Alper

[ワシントン 5日 ロイター] - バイデン米政権は日本製鉄によるUSスチール買収計画について、米鉄鋼業に打撃を与え、国家安全保障上のリスクもたらすと8月31日付の書簡で両社に伝えた。ロイターが書簡を確認した。

書簡は安価な中国製鉄鋼の世界的な供給過剰に言及。日鉄が買収すれば、USスチールが鉄鋼輸入に関税を求める可能性が低くなるとしている。

外国企業による米国企業の買収案件を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は書簡で、日鉄の決定が「国内の鉄鋼生産能力削減につながる」可能性があると指摘。

「(貿易)紛争においてUSスチールが決定を下す際に日鉄の影響を受け、日鉄の商業的利益や世界の鉄鋼市場における同社の競争上の地位を考慮する可能性がある」とした。

CFIUSは中国が世界の粗鋼生産量の約54%を占め、最大の輸出国であることを示す2022年のデータを引用し、中国は「市場をゆがめる持続的な政府介入」によって、世界の鉄鋼市場で不当に優位な立場を得ていると強調。

USスチールは海外からの輸入に対する貿易救済を積極的に求めてきたが、日鉄は米国の救済努力に反対することもあったと指摘している。

<専門家から疑問の声>

この書簡について、企業や専門家からは説得力に欠けるとの声が出ている。

この取引に関与していないCFIUSの弁護士、マイケル・ライター氏は「委員会が指摘した問題は、ほぼどのように見ても、国家安全保障の範疇に入るようなものではない。明らかに他の2つの範疇に入るものだ。国粋主義的な貿易保護主義と選挙政治だ」と指摘。

「(もし政府が)米国内での鉄鋼供給の維持を本当に心配しているのであれば、真の解決策はこの取引を阻止することではなく、CFIUSの力を使って日鉄がそのような投資を行い、維持する体制を整えることだ」と述べた。

インディアナ大学教授で米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのフェローでもあるサラ・バウアリー・ダンズマン氏は、CFIUSが国家安全保障上のリスクの定義を「大幅に拡大」しようとしているようだと指摘。

「米国内鉄鋼生産能力の強靭(きょうじん)性は明らかに国益だが、主要な条約同盟国に所在する企業による所有が、これをどう根本的に脅かすのか不明だ」と疑問を呈した。

バイデン大統領や米大統領選候補のハリス副大統領は「米国の鉄鋼会社は米国で所有されるべき」としており、トランプ前大統領も買収を阻止する姿勢を示している。

<日鉄の回答文書>

ロイターが入手した9月3日付の回答文書で日鉄は多額を投じて、遊休状態となっていたはずの米鉄鋼設備を維持・強化するとし、それにより米国内の鉄鋼生産能力の維持が可能になるほか拡大する可能性もあることは議論の余地がないとした。

同社は米政府の懸念に対処するため、拘束力のある国家安全保障に関する協定を採択することも提案した。

またUSスチールの生産能力や雇用を米国外に移転しないと改めて表明。貿易問題に関するUSスチールの決定に干渉しない方針も示した。

日鉄はUSスチールの買収により「緊密な日米関係を土台に中国に対抗する、より強力でグローバルな競争相手が誕生する」とも指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦時下でも「物流を止めるな」 ウクライナ

ワールド

メキシコ南部でM6.5の地震、首都でも揺れ 大統領

ワールド

再送ウクライナ北東部ハルキウの集合住宅に攻撃、2人

ビジネス

米国株式市場=5営業ぶり反発、ダウ319ドル高 半
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 5
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中