ニュース速報

ビジネス

英賃金、9─11月前年比+6.4%に加速 中銀に大幅利上げ継続圧力

2023年01月17日(火)19時04分

 1月17日、英国立統計局(ONS)は、9─11月の賃金が前年同期比6.4%増と、新型コロナウイルス流行時を除けば2001年の統計開始以来最大の伸びとなったと発表した。写真は2017年1月、ロンドン市内で撮影(2023年 ロイター/Eddie Keogh)

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国の昨年9─11月の賃金は大きく上昇した。物価動向を見る上で賃金に注目するイングランド銀行(英中央銀行)がインフレへの懸念を強める可能性がある。

英国立統計局(ONS)が17日発表した統計によると、9─11月の賃金(ボーナスを除く)は前年同期比6.4%増。ロイターがまとめたエコノミスト予想(6.3%増)を上回り、ロックダウン(都市封鎖)や政府の支援措置で統計にゆがみが生じた新型コロナウイルス流行時を除けば2001年の統計開始以来最大の伸びとなった。

ボーナスを含んだベースでも6.4%増加し、市場予想(6.2%増)を上回った。

9─11月の失業率は3.7%と前月から横ばいで、約50年ぶりの低水準付近にとどまった。大半のエコノミストの予想と一致した。

英中銀は来月、10回連続の利上げを決めると見られている。市場の関心事は、利上げ幅が縮小するかどうかだ。ベイリー総裁は16日の議会証言で、エネルギー価格の下落に伴いインフレ率は今年大幅な低下が見込まれるものの、労働力不足がこのシナリオに対する大きなリスクになるとの認識を示している。

パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミストは、9─11月のデータを受け、英中銀には来月、利上げ幅を縮小せず50ベーシスポイント(bp)追加利上げの圧力が掛かると指摘した。

統計では、賃金の伸び率は民間部門が前年比7.1%で公的部門の3.3%を大きく上回った。格差の背景には、公的部門は賃上げを巡り政府と対立していることがある。統計局によると、ストライキによる労働喪失日数は11月に再び増加。6─11月の6カ月間の喪失日数は過去約30年で最多だった。

<物価高で帳消し>

賃金の上昇加速にもかかわらず、物価高で家計の購買力は低下している。

消費者物価指数(CPI)で調整した総賃金は前年比3.9%減少で、2009年以来の大幅な減少だった。

加えて雇用逼迫(ひっぱく)が緩む兆しもある。10─12月の求人は前年比8万5000件減少。前年比での減少は21年初め以来、2回目だ。

職に就いておらず就業意欲もない人の割合である不就労率は21.5%。前の3カ月から0.1%ポイント低下したが、新型コロナウイルスのパンデミック直前を1.3%ポイント上回った。

パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミストは、労働市場の緩和の兆しが賃金の伸び鈍化につながると英中銀が考え、3月で利上げを終わらせる可能性もあると指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、5月はプラス転換 予想も上回

ビジネス

ホンダ社長、日産との統合協議再開「当分もうない」

ビジネス

世界経済の不確実性、貿易戦争終結でも続く=アイルラ

ワールド

パキスタン、インドの攻撃で約50人死亡と発表 40
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中