ニュース速報

ビジネス

アングル:米金融業界、富裕層増税ならニューヨーク離れ加速も

2021年04月11日(日)08時14分

 4月6日、ニューヨークのバンカーやファンドマネジャーは、世界有数の金融都市で働くため、これまで高い税率を受け入れてきた。ただ、ニューヨーク州で富裕層の増税が導入されれば、金融業界ではニューヨークから離れる動きが広がる可能性がある。ニューヨークで2012年7月撮影(2021年 ロイター/Andrew Burton)

[ボストン 6日 ロイター] - ニューヨークのバンカーやファンドマネジャーは、世界有数の金融都市で働くため、これまで高い税率を受け入れてきた。ただ、ニューヨーク州で富裕層の増税が導入されれば、金融業界ではニューヨークから離れる動きが広がる可能性がある。

新型コロナ禍で在宅勤務がある程度定着したこともそうした動きを後押ししている。ウォールストリート(米金融業界)で働くということはもはや、ウォールストリートのオフィスで仕事をするということではなくなりつつある。

ある高給取りのバンカーは「すでにフロリダでアパートを探している」と語った。また、税金が上がればスタッフへの給与が支払えなくなるとし、会社ごと移転を検討するところもある。

ニューヨーク州議会では現在、富裕層への増税が審議されており、可決されれば、年収100万ドル以上の人はニューヨーク州と市に対して最大15.73%の税金を支払うことになる。現在、州の所得税は4─8.82%、市の所得税は3.08─3.88%で、高所得者の税負担率は州と市合わせて約12.7%。

「ミリオネア・タックス(富裕税)」と呼ばれるこの法案が可決されれば、税率はカリフォルニア州の地方自治体を抜き全米で最も高い水準になる。

一部の富裕層は、ニューヨークが持つ文化的な魅力は、フロリダ州やユタ州、テキサス州などの低い税率に勝るものではなくなったと考えている。

ゴールドマン・サックスやバーチュ・ファイナンシャル、ヘッジファンドのエリオット・マネジメントなどは既に一部のスタッフをニューヨークから異動させる計画を発表している。

大手金融機関が税金対策のためにニューヨークの本社を手放すことはないだろうが、社員の一部を異動させる可能性はあるとみられる。一方、雇用人員が少ないヘッジファンドなどは本社移転を検討するかもしれない。

JPモルガン・チェース、シティグループ、ブラックロックなどは先月、異例の公開書簡を発表し、大規模増税が行われた場合、富裕層がニューヨークから離れるとの懸念を示した。

法律事務所コール・ショツの税務弁護士ジェフリー・ワインスタイン氏は「富裕層は何か気に入らないことがあると、抗議するのではなく、ただ去っていくものだ」と述べている。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル、日本のEEZ外に落下したとみ

ワールド

米主要空港で最大10%減便へ 政府閉鎖長期化で 数

ワールド

高市政権にふさわしい諮問会議議員、首相と人選=城内

ワールド

トランプ氏「イランが制裁解除を打診」
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中