ニュース速報

ビジネス

11月ロイター企業調査:自然災害の影響あり7割超、復旧に1週間以上6割

2019年11月08日(金)09時45分

 11月8日、11月ロイター企業調査によると、この2年間で日本列島を襲った自然災害の被害を受けた企業は全体の76%にのぼることが明らかになった。写真は10月14日、台風19号による千曲川の氾濫で浸水被害を受けた長野市で撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

中川泉

[東京 8日 ロイター] - 11月ロイター企業調査によると、この2年間で日本列島を襲った自然災害の被害を受けた企業は全体の76%にのぼることが明らかになった。復旧に1週間超かかったとの回答が6割を超え、現状復帰にはある程度の時間がかかることも分かった。自然災害の規模や被害の大きさは年々増しており、あらためて対策を検討している企業も4割程度ある。政府の国土強靭化計画に対して、予算の追加を望む声は6割弱を占めた。

調査期間は10月23日─11月1日。調査票発送企業は503社程度、回答社数は250社程度だった。

<半数が直接被害、復旧には時間>

昨年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震、今年相次いだ台風など、最近の自然災害は全国にまたがって発生している。調査結果では、回答企業の76%で何らかの影響があった。

具体的には、半数の企業が建物浸水や倒壊など直接的な被害を受けたほか、取引先や顧客の需要の変化を挙げた企業も37%を占めた。生産出荷の停滞、物流網・サプライチェーンの寸断も起きた。

10月の台風19号の影響でJR東日本<9020.T>では北陸新幹線車両基地が浸水。運輸業からは「河川敷に近い場所に車両基地が点在しているため、対策を検討する」とのコメントが寄せられた。

小売やサービスでは「販売商品の破損」(小売)、「高速バスの運休」(運輸)、「イベント中止」(サービス)、「宴席キャンセル」(サービス)など、売り上げへの影響も幅広くあった。

いったんこうした被害が出ると、復旧に相当時間がかかることも判明した。3日以内の早期復旧は14%と少なく、1週間経っても3割程度しか復旧していない。1カ月経つと7割程度が復旧。残り3割は数カ月以上かかっている。

製造業では、製造ラインが止まり代替生産拠点を手配することに追われた例もある。パナソニック<6752.T>は、台風の影響で「電子材料を作っている郡山の工場が浸水し、補修に2カ月程度かかる」(10月31日の決算会見で梅田博和・最高財務責任者)と明らかにしている。

<4割が自然災害備えで対策検討、主流は「分散型」>

多くの企業が被災していることから、大型台風や地震に備えての災害対策を検討し始めているところも目立つ。回答企業のおよそ4割程度が生産・物流拠点やサプライチェーン網の見直しを計画している。

製造業では、生産拠点の分散化の動きも出ている。「国内生産拠点の新設も選択肢。各地の自然災害への耐性調査を進めていく」(ゴム)、「国内外に22カ所の生産拠点を構築しリスク分散を図る」(金属一般機械)といった声が目立つ。

非製造業でも「サプライチェーンは分散と集約を逐次検討」(サ-ビス)、「代替が可能なものは仕入先を増やす」(卸売)といった調達先の工夫のほかに、「浸水に備えた止水板の整備や非常用電源の確保を検討」(運輸)といった例もある。

<国土強靭化、半数超が予算上積み必要と回答>

政府が昨年予算計上した7兆円の国土強靭化化3カ年計画について、昨今の自然災害の被害状況を踏まえて「予算が不十分」とみている企業は57%を占めた。

もともとこの計画は老朽化インフラへの対策だが、それ以外にも、台風被害を想定して「堤防の強化」を重視すべきと4割近くの企業が回答した。また、千葉県で強風による電柱倒壊や停電の被害が大きかったこともあり、「電柱地中化」を挙げる声もある。

ただ、財源に限りがある中では「新しく作るより現在ある設備、施設の老朽化対策が先決」(小売)であり、その中でも「軽重をつけた対応が必要」(輸送用機器)といった声が目立つ。

また「ハード面での対応には限界があるため、避難方法の周知徹底などソフト強化を合わせて実施する必要がある」(化学)、「縦割り行政では災害は防げない。防災省など専門機関が他府県や建設業団体を調整して対応する必要がある」(紙パルプ)といった指摘も出ている。

今後も巨大台風や豪雨の脅威は高まると予想されていることから、「全てのカバー(予防)は困難と割り切り、迅速な復旧に主眼を置いた体制の方が重要」(サービス)との声もあった。

(編集:田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、新たな対ロシア制裁発表 中国企業を狙い撃ち

ビジネス

米地銀NYCB、向こう2年の利益見通しが予想大幅に

ビジネス

FRBの政策金利決定、大統領選の影響受けない=パウ

ビジネス

ドル一時153円まで4円超下落、介入観測広がる 日
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中