ニュース速報

現時点においては追加緩和は必要ない=鈴木日銀審議委員

2019年08月29日(木)16時42分

[熊本市 29日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は29日、熊本県金融経済懇談会出席後の記者会見で、追加緩和の可能性について「(物価安定の目標に向けた)モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には具体的な検討をするが、現時点において追加緩和は必要ない」との認識を示した。

むしろ、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与える「リバーサル・レート」に「それほど遠い将来ではない時期に達する可能性がある」と指摘、低金利長期化による金融システムに対する懸念を示した。

市場ではマイナス金利の深掘りなど追加緩和観測が出ているが、鈴木委員は「マイナス金利の深掘りを行う場合は、副作用を上回る効果があるかどうかを慎重に検討する必要がある」と繰り返した。「それだけをもって効果が副作用を上回る形になるのかどうかは疑問がある」とも語った。

午前の講演では「物価安定だけでなく、金融システムの安定にも配慮しつつ金融政策を運営していくことがより重要になってきている」と語っている。

足元では長期金利はマイナス0.290%まで低下しており、長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブ・コントロール=YCC)の下限と意識されているマイナス0.2%を割り込んだ水準で推移している。

これについて鈴木委員は「金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はない」と指摘。金利低下の背景に欧米金利の低下があることなどを挙げ、「見通しが変化した場合には、もう少し正常に戻る可能性がある」との見方を示した。ただ「場合によっては、少し行き過ぎているかもしれない」とも語った。

日銀は現在、YCCで長期金利をゼロ%程度に誘導しているが、誘導目標には一定の幅を持たせている。従来はプラスマイナス0.1%程度としていたが、2018年7月に政策の枠組みを強化した際、黒田東彦総裁が「その倍くらいの幅を念頭においている」と説明したことから、市場ではプラスマイナス0.2%が上下限金利として意識されるようになった。

*内容を追加しました。

(志田義寧 編集:田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産

ワールド

原油先物は横ばい、米雇用統計受け 関税巡り不透明感

ワールド

戦闘機パイロットの死、兵器供与の必要性示す=ウクラ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中