Kirsty Wigglesworth/Pool via REUTERS
イギリス史に関する多くの著書を執筆し、「王室専門家」としても活躍する君塚直隆・駒澤大学法学部政治学科教授に、比較文化が専門でアステイオン編集委員をつとめる佐伯順子・同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻教授が聞く。『アステイオン』101号より「イギリス王室の生命力」を転載。本編は前編。
佐伯 2023年5月6日に、エリザベス2世以来70年ぶりに、チャールズ3世の戴冠式が行なわれ、2024年6月には天皇・皇后両陛下が国賓としてイギリスを公式訪問され、イギリス最高位のガーター勲章(愛称ブルーリボン)がチャールズ国王から天皇陛下に授与されました。
本日は、こうした歴史的節目を受けて、イギリス政治外交史がご専門で、ガーター勲章の歴史も含めて多くのご著書も著しておられる君塚直隆先生をお招きしました。
先生には、歴史をひもときながら、日英関係の過去、現在、未来、とくに、それぞれの皇室、王室の共通点や相違点を考察しつつ、イギリスとの関係を通してみた日本の国際社会における位置や日本がイギリスから参照できることなどについて、最新の社会情勢へのご意見も含めてお話しいただければと思います。
本題に入ります前に、君塚先生がイギリスの王室や貴族にご関心を抱かれるようになったきっかけがおありでしたら、ぜひお伺いしたいと思います。
君塚 学部生・大学院生時代を通じて19世紀のイギリスの政治史、外交史を学ぶなか、ヴィクトリア女王の存在感が突出しているように思えました。
「王は君臨すれども統治せず」どころではありません。これは立憲君主制を見直さなければということで、18世紀、そして現在にまで関心を広げるとともに、王様、それから「王室の藩屏」ともいうべき貴族に関心を持つようになりました。
ご存じのとおり、イギリスは21世紀の現在、世界で唯一の貴族院を有する国ですし、いまだに貴族たちが一定の影響力を及ぼしていますね。
佐伯 そうしたご関心が今に続いていらっしゃって、イギリスの君主制や貴族、勲章などに関するご著書が生まれているのですね。