土居 現在と将来の間でのお金のトレードオフがあることを理解しなくてはいけないということですね。自分のお金ならまだ理解できている面はありますが、それが他人のお金、さらには政府のお金、となるとそのトレードオフが抜け落ちてしまうことがままありますね。それでは、最後に横山先生は、いかがでしょうか。
横山 やはりSNSにおけるフェイクニュースの影響です。トランプ氏が大統領になったことで、フェイクニュースのチェック機能がアメリカにおいて非常に弱くなることを懸念しています。
大手メディアや公共放送を見ている人たちはまだ大丈夫なのですが、SNSユーザーがフェイクニュースを信じる傾向があることがわかっています。ですから、SNSの影響は無視できません。
メディア関係者も含めて、フェイクニュース対策にももっと注意を向けることを意識しながら、情報発信していくことがこれからもっと重要になってくると思います。
土居 最後の締めは「トレードオフを学ぶ」ということと、「フェイクニュース対策」ということですね。
コロナ禍を振り返ることで、コロナ対策の問題点や反省点、また専門知の社会への発信と市民とのコミュニケーションにおける課題など、コロナ禍での教訓を引き出せたのではないかと思います。
本日は「アステイオン・トーク」にご参加いただき、本当にありがとうございました。
伊藤由希子(Yukiko Ito)
慶應義塾大学大学院商学研究科教授。1978年生まれ。東京大学経済学部卒業。米国ブラウン大学経済学博士。東京学芸大学准教授、津田塾大学総合政策学部教授を経て、現職。専門は医療経済学、国際経済学。日本各地の地域医療における病院再編問題に取り組む。内閣府規制改革推進会議「健康・医療・介護」WG専門委員・令和臨調「財政・社会保障部会」主査として社会保障改革に取り組む。
大竹文雄(Fumio Ohtake)
大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授。1961年生まれ。京都大学経済学部卒業。大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程退学。博士(経済学)。大阪大学社会経済研究所助教授、同大学院経済学研究科などを経て、現職。専門は労働経済学・行動経済学。著書に『日本の不平等――格差社会の幻想と未来』(日本経済新聞社、サントリー学芸賞)、『競争社会の歩き方 自分の「強み」を見つけるには』(中公新書)、『あなたを変える行動経済学――よりよい意思決定・行動をめざして』(東京書籍)などがある。2020年~2023年、新型インフルエンザ等対策有識者会議・新型コロナウイルス感染症対策分科会委員をつとめた。
横山広美(Hiromi Yokoyama)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構教授。1975年生まれ。東京理科大学大学院理工学研究科満期終了。博士(理学)。東京工業大学特別研究員、総合研究大学院大学上席研究員、東京大学大学院理学系研究科准教授を経て、現職。専門は科学技術社会論。
土居丈朗(Takero Doi)
慶應義塾大学経済学部教授、アステイオン編集委員。1970年生まれ。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、現職。専門は財政学、経済政策論など。著書に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学(第2版)』 (日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)、『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)など。
『アステイオン』101号
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
CCCメディアハウス[刊]
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