土居 そうですね。また、発信の回数や発信者の数など、頻度は情報のインパクトに影響するものなのでしょうか、横山先生。
横山 この点に関しては、JAXA(宇宙航空研究開発機構)がよい例です。2000年代初頭にロケットの打ち上げの失敗が続いた時期があったのですが、次第に情報発信がうまくなっていきました。
ロケットの打ち上げはすぐに結果が分りますが、衛星の通信がつながらず失敗してしまうことがあります。そこで3時間おきぐらいに会見をし、「今ここまで分かっている」「ここから先が分からない」ということを随時発信していきました。
持っている情報で社会に役立つものをそのタイミングで随時発信していく。科学は変わっていくものであるということをメディアが仲介して、市民と社会にも知ってもらうことが大事です。
土居 最後に、今回のコロナ禍の教訓を踏まえて平時から備えておくべきことなどうかがえればと思います。
大竹 私が初めて専門家会議に出席したときには、小中高校の閉鎖や再開の基準が議論されていました。しかし、大学については会議中は誰も考えていませんでした。その点について会議後に感染症の専門家に質問すると、大学はオンライン授業になるのは当然だと医療関係者に言われました。
しかし、大学教育をオンラインにすることは自動的にはできません。会議終了後に、専門家会議の事務担当者から文部科学省の担当者に大学教育をオンライン講義にする必要があることを伝えてもらい、それを可能にするようにお願いしました。
実は、卒業要件単位数に含めることができるオンライン授業の上限があったのです。その上限を超えられるようにしてもらいました。
緊急時に状況に応じた柔軟な対応をするというのは望ましいように思えますが、見落としは避けられないということが、この時の教訓です。
ですから、平時からさまざまなことを想定し、考えておかないといけない。政府に対して研究者のネットワーク情報を伝えて多くの分野の人たちを集めて議論をすれば、こうした見落としは防げたはずです。
土居 伊藤先生は、いかがでしょうか。
伊藤 コロナ禍では「有事」ということで莫大なお金がつきました。理系研究者の方々から「日本って実はお金があったんですね」とよく言われたのですが、「いえいえ、国債を大量に発行して前借りしているんです」という話をしました。
次の有事には、今回のように湯水のように使えるお金はないという前提に立ち、効率的にお金を使う体制を平時から整備する必要があります。