アステイオン

アステイオン・トーク

日本の「専門家の信頼性」は世界的に見ても下がらなかった...ポストコロナ、そしてトランプ時代の「専門知」の在り方とは?

2025年04月23日(水)11時05分
伊藤由希子+大竹文雄+横山広美+土居丈朗(構成:黒川博文)

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「アステイオン・トーク」会場にて。左より土居丈朗氏、横山広美氏、伊藤由希子氏、大竹文雄氏

土居 それはよかったです。しかし、それは分野によっても違いがあるのでしょうか?

横山 これは世界中で言われていることですが、数理で固められる分野の信頼が高く、論争的な分野ほど信頼が低い傾向があります。

先ほど「見え方を注意深くケア」と申しましたが、「これらの専門家はこういうことをきっとやっている」というイメージを社会の側も持っているため、それを毀損させないことが専門家の信頼性を保つためには重要になります。

土居 横山先生のご発言に関して、大竹先生、伊藤先生から、ご感想を含めてお聞かせいただければと思います。

大竹 信頼が大事であることも、そして平時からそういった信頼を獲得するような情報発信や研究成果を出していくことも重要であることはその通りと思います。

ただし、特にパンデミックでは、専門家にも分からないことが多々あります。そのときに確定的な発言をするのではなく、「これはこのくらい分からないことなのだ」ということを正直に発信していくほうがよかったのだと思います。

仲田さんはシミュレーションを発表する際には、必ず信頼区間を出し、どの程度確度があるかということをいつも心がけていらっしゃいました。さらに、発表した結果が実際に当たっていたかの事後検証も常に行われていました。それは信頼を獲得する上で重要な手法だと思いました。

土居 伊藤先生は、いかがでしょうか。

伊藤 メディア関係者も同じと思いますが、1人の発信者として反省している点があります。

それは、どうしても、分かりやすいもの、大変な様子のもの、ニュースになるようなものを出してしまうことです。その結果、極端な状況を示す悪いニュースが、平均的な状況を示す良いニュースを席巻してしまうということがあると思っています。

駆けずり回っている看護師や医師の映像が1分流れると、日本全国の病床がひっ迫して大変な事態になっていると思い込んでしまいます。

しかし、実際には閑古鳥が鳴いている病院もありました。パンデミックという状況の中でこちらは画面に切り取っても面白くないので、全然報道されません。

情報にはバイアスがあるということの認識が必要です。それは市民であれ、専門家であれ、いい意味で情報を批判的に見る力を身に着けることの重要性です。

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