愚考するに、2度にわたる大戦争への反省といった政治的理由もさることながら、ヨーロッパの構成メンバーの「粒が揃っていた」こともEUの形成へ各国が積極的になれた重要な要因ではないかと思います。EUの前身であるEEC(ヨーロッパ経済共同体)の発足時のメンバーを考えてみると、西ドイツ、フランス、イタリアという3大国とベネルクスの3小国があり、いずれの国も域内総人口の3分の1を超えませんでした。それ以来、加盟メンバーは増える一方ですから、結局一つの国の人口が全体の3分の1を超えることはありませんでした。

 東西ドイツの統一によってドイツが突出した力を持つようになったと警戒する向きもありますが、2015年現在、ドイツはEU全体のGDPの21%、人口の16%を占めるのみであり、EU議会の751議席のうち96議席を持っているにすぎません。いわば「小粒」の国の寄せ集めだからこそ、どこかの国に引きずられるという警戒心を持たずに多くの国が主権を一部放棄してまでEUへの加盟に乗り出したのでしょう。

ヨーロッパの国々は大小粒ぞろい

 その観点から東アジアをみると、まず国々の粒が全く不揃いであることに気づきます。2015年の人口をみると、中国(大陸)が一国で東アジア全体の61%を占めてしまっています。ちなみに、ここでは東アジアをASEANの10カ国に日本、中国、韓国、北朝鮮、台湾、香港、マカオを加えた範囲とします。台湾、香港、マカオは独立した「国」ではありませんが、東アジア共同体を作る際には中国の一部としてではなく、独自の身分でメンバーになる可能性があると考えて別立てにしました。また、東アジア共同体が仮にできるにしてもずいぶん先の話でしょうから、それまでに朝鮮半島の和解、さらには南北統一が実現している可能性もにらみ、北朝鮮も東アジアの範囲に入れてあります。

 中国が一国で東アジアの人口の6割を占めているので、仮にEUのように議会の議席数を人口比で配分するとしたら、「東アジア議会」では中国が単独過半数ということになってしまいます。逆に一国一票にしたら中国にとってはきわめて不利になります。共同体を作るときに、どのようなルールで意志決定を行うかがきわめて頭の痛い問題となります。

 もう一つ、東アジアが不揃いな点は、一人あたり所得のばらつきが大きいことです。ヨーロッパの場合、EEC時代の1960年時点で、一人あたりGDPが最高だったのはフランスで1338ドル、最低はイタリアの804ドルで、変動係数(=標準偏差/平均)を計算すると19%ということになります。2004年以降、EUは一人あたりGDPが低い中東欧諸国を加えたので、変動係数は大きくなりますが、それでも2015年時点で55%です。

大き過ぎた所得格差