結婚相手も仕事(収入がある仕事に就くことは許されないので、チャリティーのみ)も自分で選択することができず、王室の長である女王の許可を得なければならない。それはheirでも同じなのだが、彼らはいつか支配者になるという未来がある。でも、spareはheirに子供が生まれた瞬間にspareとしての価値も失う。収入など気にせずに無責任に生きられる立場を羨む人もいるだろう。なぜそれで満足できないのかと。しかし、人には「生きがい」や「生まれてきたことの意義」が必要なものだ。ヘンリーが回想録に書いているように「スキーのインストラクターになりたい」といった小さな望みすら叶えることはできない立場で、健全な人生を生きることができる人はどれだけいるだろう? 少なくとも私には無理だ。
ガールフレンドを作ることも容易ではない。どの女性も、タブロイド紙が過去を暴き出して誇張し、24時間パパラッチに追いかけられる状況に耐えられずにヘンリーを去った。おとぎ話とは異なり、プリンスと結婚したい女性はそういないのだ。その状況がようやく変わったのが、メーガン・マークルとの出会いである。出会いから結婚、そしてタブロイド紙からの執拗な攻撃とそれに影響された人々からの脅迫、その状況下でのメーガンの自殺念慮など、心身の危機が原因で王室を去る決断が書かれているのがパート3だ。
1981年の夏休みにロンドンに短期語学留学をした私は、ダイアナとチャールズの結婚式を見るために早朝からバッキンガム宮殿に行った。遠くから見ただけだが、私と同年代のダイアナ妃のその後はそれとなくずっと気になっていた。
<H4>まるでおとぎ話の世界</H4>
ダイアナを殺したのはタブロイド紙だとずっと思っていたのだが、ヘンリー王子の『SPARE』を読んでいて、「これは、40年以上かけて演じられている古典的なおとぎ話ではないか!」と思いついた。つまり、シンデレラや白雪姫のパターンである。
チャールズが本当に結婚したかったのはカミラだが、エリザベス女王が断固として認めなかったために諦めたというのはよく知られている逸話だ。普通ならそこで終わるのだが、カミラは他の男性と結婚してもチャールズとの関係を諦めることはなかった。その間にもカミラはダイアナに近づいて心理的操作をしたという噂もあるが、それが真実かどうかは分からない。英王室についての噂の大部分は信頼できないということを忘れてはならないだろう。だが、ヘンリーが書いているように、メーガン妃を執拗に叩くタブロイド紙にリークしたのがカミラであるというのは、かなり信憑性がある。カミラは、メイフェアでのプライベートなランチで、メーガン妃を最もよく攻撃しているゴシップ・ジャーナリストのピアース・モーガンとジェレミー・クラークソンの2人と同席していたことが明らかになったからだ。しかも、その2日後に、ジェレミー・クラークソンはメーガンについて下記のような「おぞましい」としか言いようのないコラムを書いたのである(訳したくないほどひどいので、興味がある人は自動翻訳を使っていただきたい)。
「At night, I'm unable to sleep as I lie there, grinding my teeth and dreaming of the day when she is made to parade naked through the streets of every town in Britain while the crowds chant 'Shame!' and throw lumps of excrement at her.」
このようにタブロイド紙はメーガンへの嫌悪感や怒りをかきたてるような記事を書き続け、それによる脅迫が増えて追い詰められたヘンリーは、父のチャールズを通じて「王室」に助けを求めた。しかし、チャールズは援助を与るどころか息子夫婦を切り捨て、カミラは懇意にしているタブロイド紙に悪意があるリークをし続けた。