<イスラエルは完全にはうまくいかないガールフレンドのようなもの――。イスラエル紙ハーレツの写真家ダニエル・チチクの作品には、紛争や暴力の匂いがしない>

大半のアーティストや写真家は、人物や風景を含む自分の周りにある"環境"を通して、現代社会と現代人を表現しようとする。今回取り上げる42歳のイスラエル人、ダニエル・チチクもその1人だ。

生まれたときからカメラを手にし、イスラエルのリベラルな有力紙ハーレツで2003年以来、写真家兼フォトエディターとして働いているという。

彼の作品に流れているキーワードはHeatだ。物理的な暑さと、心理的な情熱やエネルギーを表す。たとえ被写体が冬に関連するものであってもだ。

チチクとイスラエルの関係もそうである。そこでは、空気、アスファルト、風景、人といった全てがHeatで覆われているという。さらに彼は、自分にとってのイスラエルは、完全にはうまくいかないガールフレンドみたいなものだと話す。うまくいかないのに、なぜか一緒に居させてしまうHeatがある。愛と憎しみ、怒りが入り交じっている。

Heatについて彼と議論する前、私はチチクがイスラエルの写真家であることを認識していたが、彼の作品、なかでも「Sunburn」シリーズを見たとき、不思議な感覚とある種の混乱を覚えた。一見すると典型的なイスラエルや中東の写真家でありながら、実はそうではないからだ。

確かに、作品に流れている、暑くて、触れれば爆発して分解しそうな感覚――Heatの一般的特徴だ――は、中東の写真家がしばしば持つ特徴だ。だが、イスラエルの多くの写真家が意識的にしろ無意識的にしろ取り入れている、紛争や暴力に対する葛藤の"匂い"が実質上なかったのである。むしろ、それを超えた、得体の知れない何かに取り憑かれたような匂いが作品に漂っていた。

どちらも勝つことはない