それこそバイの作品の最大の魅力だ。だが、彼女がときおり不必要に思えるポスト・プロダクション的なテクニックを使用しているという理由で、私はその最大の魅力に今まで入り込めなかったのである。

バイのフィクション・ポートレート・シリーズは、彼女自身に絡みつく物語から生まれた。まず、北欧の不可思議な自然に接するようになったのは、バイが免疫機能が破壊されていく大病を患ったことが大きな原因だった。そのため人との関わりが極度に制限され、代わりに大自然の中をある種のセラピーとして1人で探索するようになったのである。

そこで見捨てられた家々に出くわし、その中で昔のままの状態で置かれていた家具、本、写真などを見つけ、そこに存在していたであろうさまざまな物語を考えるようになっていった。

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その後、バイの免疫系の大病は治癒したが、彼女の100歳になる祖母が認知症になった。祖母は自分が誰であるかはわからなくなったが、例えば鳥に餌をやったり、花や木に水をやったり、髪をカールさせることなど、日常の決まりごとのような行為ははっきりと覚えており、日々行っていた。

バイはそのことに驚嘆し、それが大きなきっかけとなって、以後、廃墟の中でそこに存在したかもしれない物語を考え、フィクション・ポートレートとして撮影するようになったのである。

フィクション・ポートレートという物語の奥底にあるコンセプトであり、最大のキーワードでもあるのは、現代社会がどこまでも追求しようとする"完全性"と、バイが見捨てられた廃墟の中で描く物語の特性、つまり"不完全性"だ。

本来、現実の人間社会にとっては、表裏一体の真実であるはずの対極性である。脱帽である。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Britt Marie Bye @bybrittm

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