[ロンドン 20日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をめぐる6月23日の国民投票は、今後の英国とEUの将来を方向づけるものとなる。
結果に関わらず、EUは統治の在り方について再考を迫られることになるだろう。米国では大統領選に向け、反主流派のドナルド・トランプ氏が人気を集めており、今回の英国民投票は西側諸国の構造全体に大きな影響を及ぼす可能性もある。
先週、英国では残留派の女性議員が銃撃され死亡する事件が起きた。目撃者によると、銃撃犯は極右団体の名称である「ブリテン・ファースト」と叫んだとされ、離脱派と残留派の対立が死者を出す事態に発展したことで、衝撃が広がった。
両派は互いに国民を欺いていると非難し合ってきたが、同事件を受け、熱を帯びていた運動は一気にトーンダウンしている。
EU支持派団体「ストロンガー・イン」の関係者は「選挙運動のやり方について慎重になっており、おそらく対立陣営を尊重したスタンスを取っている」と語った。
離脱支持派は、運動に関する詳細はコメントしないとしている。
国民投票は23日0600GMT(日本時間午後3時)に投票が始まり、2100GMT(24日午前6時)に締め切られる。
結果は翌日0000─0500GMT(24日午前9時─午後2時)ごろに明らかになる見通し。
離脱が決まれば、外国為替市場や株式、債券市場に混乱が広がり、英国の政治危機につながるほか、冷戦後の欧州の秩序が崩れる可能性がある。
EUは域内2位の経済大国を失うこととなり、英国経済も失速するとみられる。
一方、残留が決まれば、ポンドが上昇し、西側諸国に安心感が広がるとみられるものの、キャメロン首相率いる与党・保守党は大きく分裂したままになる。
<英国の在り方>
残留支持派のブラウン前首相は国民投票について、英ガーディアン紙に対し、「英国がどのような国なのか、われわれが熱望するものは何かということが常に問われてきた」と指摘。
「しかし、欧州内での英国の将来に関する決定をハイジャックするように奪い、移民の問題にすり替え、ひいては移民を支持する人に矛先を向けようとする動きがある」と語った。
議員殺害事件が国民投票にどう影響するかや、世論調査が実際の結果をどの程度反映しているかは明らかでない。
ただ、調査会社ユーガブの直近の世論調査では、残留支持が5ポイント上昇し44%、離脱支持は3ポイント低下し43%となった。同調査は殺害事件のニュースが流れる前に3分の1の回答を得た。
ユーガブは「EUから離脱した場合の経済的影響への懸念が主な背景とみられる」としている。
<欧州への脅威>
離脱支持派は、EUから離脱すれば英国は繁栄すると訴える。次期首相候補と目されるボリス・ジョンソン前ロンドン市長は、EUが超大国の形成を模索しているとして、ヒトラーやナポレオンに擬えた。
同氏は先月、英紙サンデー・テレグラフとのインタビューで「ナポレオン、ヒトラーなど多くの人がこの方法を試み、悲劇に終わっている。EUは別の手段による試みだが、欧州という概念に対する潜在的な忠誠心がないことが永遠の課題となっている」と述べた。
一方、ドイツのシュタインマイヤー外相は今月、「離脱が決まれば、EUを揺るがすだろう。加盟28カ国から1カ国が抜けるだけで済まない」と指摘。
「EUの結束を確保し、数十年にわたって成功してきた統合努力が分裂に終わらないよう、協調した取り組みが必要になる」と訴えた。
今回の国民投票がEUの分裂につながらなかったとしても、EUと英国の間で複雑な交渉が何年も続く事態となり、長期的な景気先行き不透明感につながる可能性がある。
また、残留支持派の英元首相トニー・ブレア氏とジョン・メージャー氏は、離脱すれば、北アイルランドの安定が脅かされ、スコットランドの独立を求める声が高まり、英連合王国の分裂につながる恐れがあると警告している。
<ブレグジット後>
国民投票が発表されて以降、企業や同盟国は離脱リスクに警戒してきた。
米国は、英国が離脱すれば、欧州の同盟国としてドイツを最優先する方針を明確にしている。
しかし、離脱派はこうした海外首脳らやグローバル企業からのブレグジットに対する警告が、2008年の金融危機以降に強さを増した反エスタブリッシュメントの風潮をかえってあおったと分析する。
離脱支持団体「ボート・リーブ」の代表、マシュー・エリオット氏は「(米大統領選で共和党の候補指名を確実にしたドナルド)トランプ氏の影響ではなく、もっと広範囲にわたる反主流派感情が世界に広がっている」と指摘。
「われわれはこの波に乗っている。この感情が、実際にわれわれを勝利に導くと考えている」と語った。
(Guy Faulconbridge記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)