イランの核施設がコンピューターウイルスによるサイバー攻撃を受けていることは、当サイトでも伝えている通りだが、どうやらそのウイルスを開発したのはアメリカとイスラエルらしいと、15日付の米ニューヨークタイムズの記事が報じている。
イラン中部ナタンズの核施設では、核兵器の製造に必要な濃縮ウランの精製作業が行われている。2009年頃からこの施設のコンピューターを「スタックスネット」と呼ばれるウイルスが襲い、施設の遠心分離機の5分の1が停止に追い込まれ、イランの核開発は大幅に遅れているという。
昨年11月、イランのアハマディネジャド大統領は、サイバー攻撃を初めて公式に認め、「設備に少々の問題が生じた」と語った。しかしワシントンの民間研究所の報告書によれば、その被害は甚大で、合計984個の機械が作動しなくなったという。
イラン当局は当初からイスラエルとアメリカの関与を疑った。今回のニューヨークタイムズの記事は裏付けとなる状況証拠や関係者の証言を集め、両国政府がウイルスを開発したと断定している。
ナタンズの核施設には、遠心分離機の作業を管理するシステムとしてドイツ・シーメンス社製のコンピューターが使われている。2008年の初頭、シーメンスはアイダホ州にある米エネルギー省傘下の国立研究所と共同で、産業用機械を制御するコンピューターシステムの危険性を探るプロジェクトに参加した。シーメンスとしては、世界に販売した自社製品の安全性を確保するためのプロジェクトだったが、この中で研究所がシステムの脆弱性を手に入れたという。
また、イランでは「P1」と呼ばれる、パキスタンのカーン博士が開発した遠心分離機が使われているが、アメリカとイスラエルが同型の機械を入手して、ウイルス攻撃の効果があるか実験を重ねていたことも関係者の証言でわかった。
記事によれば、サイバー攻撃はブッシュ政権末期に米政府が承認し、その後オバマに政権が移っても引き続き促進されたという。イスラエルは、1981年にイラクの、2007年にシリアの核関連施設を爆撃して核開発を阻止した。だがイランに対しては、国際社会の非難や直接的な軍事的対立を避けるために、サイバー攻撃の準備を進めていた。
もちろんアメリカ、イスラエルの両政府とも、ウイルスを開発したことは公式に認めていない。「サイバー攻撃」と言えば表現は良いが、やっていることはテロと変わらない。例えば中国やロシアが同じことをすれば、当然のごとく国際社会から最大限の非難を浴びることになる。アメリカが関与すれば「テロ」ではなくなる、とでもいうのだろうか。
――編集部・知久敏之