「ズマはセックスのことしか頭にない偏屈者。イギリスはなぜこんなゲス野郎にこびへつらうのか?」 

 これは、3月3日からイギリスを公式訪問した南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領に向けて、英大衆紙デイリー・メールが打った記事のヘッドライン。妻5人(現在は3人、1人は離婚、もう1人は自殺)との間にウン十人の子供(公式には20人だが、デイリー・メールは「実は35人!」と報じた)をつくっていることを非難したもの。

 デイリー・メールほどケンカ腰ではないにせよ、英メディアは多かれ少なかれズマの「一夫多妻ライフ」を興味津々に取り上げた。

 対するズマは、南アのスター紙に「ズールー文化を冒涜している。イギリス人は植民地支配にやって来たときと同様、いまだにわれわれを下等な野蛮人と見なしている」と反撃、物議を醸す初訪英となった。

 南アでは、一夫多妻はズールー族の伝統で、法律でも認められている。「一夫一妻を装いながら愛人や隠し子を持つより、一夫多妻の伝統を誇りに思う」というのが、ズマの昔からの主張だ。

 そういえば、タイガー・ウッズの不倫が発覚したとき、ニューズウィーク英語版のウェブにこんなコラムがあった。

「人間は元来、一夫一婦制が守れる生き物じゃない。浮気するのは人間の性。誰にでも複数の相手を持ちたいという願望はある。なのに多くの人が一夫一婦を選ぶのは、そうすることが正しいと思っているから。でもこの制度が非現実的で、しっくりこない人だっている。信仰の自由があるように、一夫一婦を選ばない自由があってもいいはずだ」と。

 ちなみに、これを書いたジェニー・ブロックは女性と浮気したこと、バイセクシャルであることを夫に告白。夫は仰天したけど、やはりお互いにかけがえのない相手だと確認、夫婦間以外の性的な関係を認める「オープン・マリッジ」で合意し、今は彼女と彼と彼女でハッピーに暮らしているらしい(なんともうらやましい)。

 と、こんな考え方もあることだし、まして国の法律で認められている結婚制度について、ズマがよその国からとやかく言われるなんて大きなお世話だと怒ったのも分かる。

 ズマの私生活を攻撃した英メディアは、現代社会に一夫多妻制はそぐわないとか言うけれど、言外に「ああ、お前たちはまだ文明化していないのか、困ったもんだ」と見下している感がある。好色呼ばわりするけれど、本音は70歳近いズマの精力に嫉妬なのでは?

 女性蔑視だとか言うけれど、3人の奥さんはみんな幸せそうだ。3人目を迎えたのは、つい数カ月前。野外で行われた結婚式には第1、第2夫人も参列。ズマ夫妻はヒョウ柄の伝統衣装をまとい、満面の笑みで踊ってた。

 ただし、ズマにもいただけないところは結構ある。過去にレイプ容疑で起訴されたり、「コンドームをつけずにセックスしてもシャワーを浴びれば感染しない」と言ったり。HIV感染率が高い国の大統領として、いや、人としてあってはならない言動だ。

 とにもかくにも、今回のズマの訪英がイギリスでちょっとした騒ぎになったのは事実。帰国の途につく頃には、メディア合戦も落ち着き、「ズマは過密スケジュールの疲れも見せずチャーミングなスマイルを残していった」と報じたところも。

 良くも悪くも、一国の元首としての存在感を示して帰っていったのは確かみたい。

──編集部・中村美鈴

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