[東京 20日 ロイター] - 日経平均<.N225>を2万円近くまで押し戻したのは、またしても外国人投資家の買いだが、その「中身」は以前と異なる。オイルマネーの勢いが減衰する一方、特定の外資系証券からの大口先物買いが目立つ。アベノミクスや日本株に対する海外勢の見方は楽観と悲観に二分されてきており、これまでのような「全員参加型」ではなくなりつつある。
<オイルマネーに陰り>
海外勢の買い越し額が小振りになってきた。現物株と先物合わせて、海外投資家の日本株の買いは、10月第3週から前週まで4週連続の買い越しとなったが、その平均額は週4067億円。4月の4週連続の買い越し時は平均5895億円、2─3月の5週連続の買い越しの際は平均6108億円だった。
こうした外国人投資家の買い越し規模の縮小の背景には、オイルマネーの勢いが弱まってきたことがあるとみられている。「原油価格の下落により、財政面で苦しくなった産油国が、余剰資金を運営してきたソブリン・ウェルス・ファンド(SWF,政府系ファンド)などを取り崩す動きが出ている」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)という。
実際、サウジアラビア通貨庁(中央銀行)の対外純資産は昨年8月に過去最高の7370億ドルを記録したが、今年9月には6470億ドルまで減少。2012年11月以来の低水準を記録した。計900億ドル、日本円(120円で計算)で10兆8000億円減ったことになる。
オイルマネーは「ロンドンを中継所として、日本に入ってきている」(外資系証券トレーダー)との見方がもっぱらだ。財務省が公表している地域別の対内証券投資をみると、英国からの株式・投資ファンド持ち分は、8、9月と、2012年11月以降の「アベノミクス相場」で初の2カ月連続のマイナス(計2兆4216億円の流出)となった。7月までは3兆5716円の買い越しだった。
<モルガン・スタンレーの大口買い>
一方、市場の話題を集めているのが、モルガン・スタンレーMUFG証券の大量の先物買いだ。
実は、前週の海外勢の現物と先物の買い7455億円の中には、同社の買いが多く含まれていた。市場筋によると、225先物とTOPIX先物を合わせて、約5100億円を買い越していたと推計されている。外国人投資家の前週の先物の買い越し額は4451億円だったため、同社分を除けば先物は売り越しとなる。
この背後にいる「買い主体」については明らかになっていない。「これまで同社はこうした大量の先物買いをみせることが少なかったため憶測を呼んでいる。CTA(商品投資顧問業者)は別の証券会社を使うことが多いとされることから、グローバルマクロ系ヘッジファンドではないかといった思惑が出ている」(国内大手証券トレーダー)という。
ただ、こうした一部投資家からの買いを除けば、海外勢の動きは、これまでの「全員参加型」のアベノミクス相場とは様相が変わり始めている。
海外投資家は8月第2週から9月第5週まで、8週連続で計7兆0799億円を売り越しており、「足元の買いはその反動にすぎない」(大和証券・投資戦略部シニアストラテジストの塩村賢史氏)との見方もある。2015年は前週までの累計で約1.8兆円の売り越し。13年は15.6兆円の買い越し、14年は7000億円弱の買い越しだった。
<「テスト期間」に入るアベノミクス>
海外勢の買いが一様ではなくなりつつある背景には、日本経済や日本株への見方が分かれてきたことがある。
メリルリンチの11月のファンドマネージャー調査によれば、グローバル投資家による日本株の配分状況はプラス28%と前月から5%ポイント増加し、引き続きオーバーウエートとなった。国内の企業業績や景気に対する懸念は後退し、日本株は割安との見方が維持されているという。欧州に次いで2番目の高さだが、今回のパリ同時多発攻撃で、日本株にシフトする動きが強まる可能性もありそうだ。
しかし、日本経済は、2年で2%の物価目標をいまだ達成できず、実質国内総生産(GDP)も2期連続のマイナス。デンマークの投資銀行サクソバンクのスティーン・ヤコブセン最高運用責任者(CIO)は17日、ロイターとのインタビューで、アベノミクスについて「すでに失敗している」と述べた。
JPモルガン・アセット・マネジメントの主席エコノミスト、榊原可人氏は、アベノミクスが「テスト期間」に入ってきたと指摘する。「名目成長率が金利を上回り、デフレ脱却のための環境は整った。円安効果が薄れ、物価も伸びが鈍くなりつつあるなかで、今後も企業が利益を出し続けていけるかを見極める段階だ。その点で海外勢も見方が分かれている」と話している。
(伊賀大記 編集:石田仁志)