<同盟が「価値」ではなく「取引」で測られるとき、アジアの安保は一気に脆くなる。揺らぐ米国を前提に、「米国任せ」を見直す時だ>

ベトナム戦争以降、今ほどアジアの安全保障が脆弱に見えたことはなかった。

米軍が10年に及ぶ戦闘の末にインドシナ半島から撤退したときには、ベトナム人の死者は推計100万~300万人、米兵の死者は5万8000人を超えていた。アメリカの国内政治はぼろぼろで、長く続くスタグフレーションが始まっていた。

世界ではソビエト連邦が冷戦に勝利しつつあるという見方が強まっていた。アメリカが南ベトナムの同盟国を見捨てたことは、アジア全域で経済的・政治的不安定という暗い未来を予感させた。

今やアメリカのアジアへの関与は、バラク・オバマ米大統領がアジア重視の「リバランス(再均衡)政策」を掲げてからわずか十数年で、ベトナム戦争が終結した1975年と同じくらい希薄になっている。

確かに、アメリカは日本、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、韓国とそれぞれ相互防衛条約を結んでおり、シンガポールを含む多くの地域で軍事基地や基地使用権を保持している。

ただし、ドナルド・トランプ現政権とアジアの民主主義国政府との関係は、長年の同盟国に見られるものとは程遠い。むしろ商取引に近く、共通の価値観や安全保障上の懸念はほとんど考慮されていない。

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