首輪を回収しなければカメラのデータは見られない

しかし、やってみないことにはどうなるかはわからないし、問題点の洗い出しもできない。そこで、メーカーでは保証はしないという条件で購入し、クマに装着することにしたのである。これが2014年のことだ。

最初に購入したモデルは、まだハイビジョン撮影もできず、録画可能時間も4〜5時間だった。買った首輪は、まず奥多摩のクマに装着した。首輪はタイマーを設定して自動的に外すことができる。しかし、クマはしょっちゅう崖を上ったり木に登ったりするので、勝手に外れる設定だとどこに落とされるかわからない。カメラが録画したデータは内蔵メモリに記録される。つまり、首輪を回収しなければ見ることができないのだ。

「リアルタイムで録画データを転送したりできないの?」

そう思った人もいるだろう。ただ、データ転送は電力消費が激しいので、すぐに電池が切れてしまう。

だから、GPSでクマの位置を確認し、「ここで落とせば拾えるぞ!」というタイミングでリモコンを使って落とすことにした。

それでも、首輪は思わぬところに落ちてしまう。例えば学生がリモコンで落としたところ、首輪が崖を転がってしまい、滝の踊り場のようなところに落ちてしまったことがあった。

季節は6月の梅雨時。滝は水量が多くてとても手が出せなかった。こうなると回収作業は水量が減る梅雨明けである。問題は現場だ。どうやら沢登りやロープワークの経験がある私にも歯が立たない難所らしい。

高度な機械があっても使いこなすには結局体力がいる

そこで私は助っ人を呼んだ。研究室の後輩の後藤優介君である。彼はクライミングのスキルがあって運動神経が抜群のスパイダーマンのような男だ。大学を離れてしばらくは富山県の立山カルデラ砂防博物館に勤めていたが、茨城県自然博物館の学芸員として関東に戻ってきた。それからはお助けキャラのごとく学生をサポートし、たびたび研究室のピンチを救ってくれている。

このときも梅雨明けを待って首輪を落としたと思われる場所まで案内すると、ザイルを使ってスルスルと滝を登り、危なげもなく首輪を回収してくれたのだった。

器用な学生が蔓を伝って木を登り、上のほうの枝に引っかかった首輪を回収したこともあった。

GPSと小型カメラを搭載した高度な機械を使っているのに、上手に使いこなすには体力やクライミングのような生身の技術が要求される。そういうところもフィールドワークの面白さかもしれない。

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起きている時間の大部分はボーっと......