<消費者物価指数がマイナス、巨額の債務が増える中国。インフレを心配しているようだが、むしろ心配すべきことは長年日本が経験してきた「デフレマインド」>

今の中国経済は、その潜在的な成長力を発揮していない。投資と消費需要が期待値を下回っているだけでなく、「2つのD」という難題に直面している。デフレ(deflation)と債務(debt)だ。

消費者物価指数は7月に2年5カ月ぶりにマイナスとなり、生産者物価指数は1年近くマイナスが続いている。一方で、官民とも巨額の債務を積み増してきた。背景にはコロナ禍による支出増と、以前からの金融緩和による広範な影響がある。

2つのDは有害なペアだ。デフレは債務の実質的価値を上昇させ、企業の資金調達を妨げる。そのため経営破綻の恐れが増す。しかもデフレと債務のペアが定着すれば、悪循環が生じかねない。需要減から投資減、生産減、所得減へつながり、結果として一層の需要減に陥る恐れがある。

この危険なスパイラルは、政策立案に2つの影響をもたらす。デフレマインドを抑制するには、総需要を刺激してインフレを促すことが急務となる。

しかし債務増だけに頼ることは避け、むしろ積極的な緩和策を講じるべきだろう。例えば、中央銀行が国債を購入して保有するなどだ。

もちろん中国当局は、数々の景気浮揚策を進めている。住宅ローン金利の引き下げ、不動産開発企業への資金調達制限の緩和、消費支出の増加を狙っての株価対策などだが、今のところ成果は芳しくない。

それなのに、中国人民銀行(中央銀行)が流動性を大幅に高めるような金融政策は取られていない。背景には、以下の4つの考え方があるようだ。

高インフレの引き金になる、さらなる緩和の余地はない、金融刺激策の効果は限定的、ドルなどの主要通貨に対して人民元安がさらに進む......。だが、この4つはどれも見当違いと言える。

まず、インフレは心配すべきではない。既に多くの部門に、価格と名目賃金が下がるという逆の問題が起きている。消費者や企業は価格の下落を予想すれば購入を先送りし、さらに需要を減らす。優先すべきなのは、債務デフレのスパイラルを未然に防ぐことだ。

第2に、既に低金利だから金融緩和は難しいという考えも間違いだ。中国当局が認めるように、金融機関の預金準備率をさらに引き下げることは可能だ。いま市中銀行では7.6%で、アメリカの0%や日本の0.8%より高い。

第3に中国人民銀行は今も、2008年に起きた金融危機後の先進国の中央銀行のように大量の国債を買い入れ、商業銀行の貸し出しの流動性を高めることができる。

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