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「現地で観戦した平昌五輪の演技は、双眼鏡を使っていたわけでもないのに、終始、羽生選手の気迫に満ちた表情が目に見えるようでした。演技中は水を打ったようにシンとしていた客席から、演技後に爆発的な拍手が鳴り響いたことが忘れられません」(茜氏談)『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』178頁より ©EPA=時事

社会人になると、海外まで試合を見に行くようになった。当時は、テレビで見ることができるフィギュアスケートの試合と言えばNHK杯くらいで、世界選手権といえども放送はなかった。もちろん初期は動画サイトもないし、フィギュアスケート観戦ツアーもない。演技を見たければ試合会場に足を運ぶしかなく、自力で旅程を組んで海外まで見に行った。

国内外の会場で、ファン同士で話すようになると、私は日本人ファンと海外のファンの気質の違いを感じた。海外ファンはお気に入りの選手が複数いたり、自国の選手全員を応援したりする場合が圧倒的だ。対して、日本人ファンは1人の選手を現役引退まで一途に応援し続ける人が多い。脇目も振らずに応援しなければ、一途に努力をしている選手に対して申し訳ないと、自分を律しているようにも見える。


どちらが良い悪いという話ではない。けれど、日本人の特性のためなのか、ソチ五輪の頃までは、羽生選手の実力の割には海外の試合まで足を運ぶような日本人ファンは目立たなかったように思う。羽生選手がシニアデビューした2010年前後は、日本男子フィギュアの黄金期で、熱心なフィギュアファンには贔屓の選手が既にいたからだろう。

「ロミオ+ジュリエット」の演技が伝説となった12年世界選手権(仏ニース)の後ですら、私は海外の試合会場で「日本人はなぜ、もっとユヅの演技を見に来ないの?」と声をかけられた経験が何度もある。

早くから全日本選手権の予選を免除される立場だった羽生選手は、海外での試合が圧倒的に多かった。羽生選手ファンの参加を見越して、旅行会社各社がこぞってグランプリシリーズや世界選手権の「フィギュアスケート観戦ツアー」を設定するようになったのは、ソチ五輪以降だ。試合会場では、外国人ファンのほうが早くから羽生選手に熱狂していた印象を持つ。

日本での羽生選手の人気は、かつてのコアなファン以外の層から火が付いた。アップで見ても引きで映しても美しく、生を全力でぶつけるような演技は、テレビや動画サイトでたまたま見かけた人にも強く訴えかけた。演技後のキス・アンド・クライやインタビューで垣間見える真面目さと可愛らしさも、羽生結弦という人間を応援したくなる気持ちを後押ししただろう。

私はと言えば、久しぶりの王子様タイプで世界と戦う日本人選手の登場に、ワクワクして演技を追った。

サクセスロードのための行動は自分で決めた