<日本の「繊細さん/HSP」のように、欧米で認知が進む「考えすぎ」の問題。心身の健康に及ぼす影響も大きいが、その原因となる「思考ウイルス」を見つけ出し、健康的に考えることは訓練次第で可能だ>

前の仕事を辞めるべきじゃなかった、リストラに遭って家のローンを払えなくなったらどうしよう......。考えても仕方のないことをついつい考えてしまう「考えすぎ」という状態に、気がつくと追い込まれていることはないだろうか。

ネット上でもさまざまな情報が飛び交うなかで、その状態に陥るのは当然のことかもしれない。「考えすぎ」強要社会とも言える現代を生き抜くのは至難の技だ。

このような気分や不安な状態に対する最先端の治療法として知られる認知行動療法(CBT)を利用し、あらゆる心配や落ち込みを手放す考え方と方法をまとめた書籍『考えすぎてしまうあなたへ』(CCCメディアハウス)が発売された。

著者のグウェンドリン・スミスは、気分障害や不安障害を専門とするニュージーランドの臨床心理学者だ。認知行動療法を用いた「考えすぎ」への対処法をブログで紹介したところ、世界中で話題になった。

そもそも、「考えすぎ」とは、どういう状況を言うのか。著者が最もしっくりきた定義が以下だ。


「考えすぎる」(動詞)
役立つというよりは害になるような方法で、何かについて考えたり分析したりすることに、あまりにも多くの時間を費やすこと。
(Merriam-Webster online dictionary)

欧米ではここ数年、この「考えすぎ(overthinking)」が話題となっている。日本でも近年「繊細さん」という言葉が浸透するとともに「HSP(Highly Sensitive Person)」についての認知が進んだが、「考えすぎ」も同様に、現象に名前がつくことでその存在が浮き彫りになった問題と言えるだろう。

では、この「害になるような」考えすぎ問題に、どのように向き合い、どう対処すればいいのか。認知行動療法の理論に基づきながらも、平易な文章で分かりやすく書かれた本書のエッセンスを紹介する。

ポジティブな考えすぎとネガティブな考えすぎの違い

まず、大切なのが、すべての「考えすぎ」が有害なのではないということ。

我を忘れるほど集中して考えたり、没頭できる状態に幸せを感じられることもある。例えば、結婚式を前に、ヘアスタイルやドレス、式次第について一日中考えていれば多幸感に包まれているだろう。

著者が「ポジティブな考えすぎ」と名付けるこの状況では、ドーパミンやオキシトシン、セロトニン、エンドルフィンなど、いわゆる幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質が活性化している。

しかし次のように考えているとしたら、事情は変わってくる。

「考えすぎ」は睡眠障害を引き起こす可能性がある