衛星インターネット事業でもケチをつけるベゾス

そのスターリンクに対し、ベゾスは「FCC(米連邦通信員会)の規則に違反している」とクレームをつけ、今年8月にFCCに抗議文を送った。

スターリンクは新たな衛星打ち上げについて、2つの計画をFCCに提出し、「後日に最善の計画を選択する」と説明していたが、ベゾスはその申請内容が規則違反だと訴えたのだ。

今後の推移を見守らなければいけないが、ここでアマゾンの子会社で衛星インターネット事業を進めるカイパーシステムズ社について見ておこう。

アマゾンのカイパーシステムズは3236基のカイパー衛星を打上げる計画だが、現時点ではまだひとつも衛星を打ち上げていない。

しかも、打上げる時はブルーオリジンのロケットではなく、ユナイテッドローンチ・アライアンス社のロケットを使用するという。

どうしてブルーオリジンのロケットを使わないのか?

理由は簡単だ。まだブルーオリジンのロケット「ニューシェパード」は高度100キロ程度しか打ち上げらないからだ。

かたやスペースXのスターリンク衛星は約500キロの高度までファルコン9で打上げている。

つまりブルーオリジンの「ニューシェパード」は、現時点では高度100キロでの無重力の宇宙観光を数分間するためのロケットでしかない。

因縁のきっかけはアノ技術だった

ベゾスとマスクの対立は今に始まったことではなく、発端は「摩擦撹拌接合」だった。

ファルコンロケットの燃料タンクの製造工程では、従来のタングステン電極を用いるTIG溶接ではなく、「摩擦撹拌接合」という接合材料に回転ツールを当てて摩擦熱で接合する新しい技術を用いている。

この接合技術の利点は、融点以下で接合するので、接合の歪みが少なく欠陥が発生しにくい。しかも、前処理が必要なく、溶接作業と並行して、仕上がりの確認が超音波で簡単にでき、結果的に製造コストを低く抑えられる。

火星ロケット実現を目標に掲げるスペースXにとって、摩擦撹拌接合はロケットコストを大幅に削減する重要な技術の1つだった。

ところが、スペースXの摩擦撹拌接合の技術者を、ベゾスのブルーオリジンが引き抜いたのだ。

ベゾスとマスクの因縁の戦いはこの時に始まったと言っていい。

スペースXの最大の強みは優秀な人材が集まっていることであり、マスクはAクラスの人材の採用に熱心な経営者だ。

だからこそAクラスの技術者を引き抜かれたマスクはベゾスを批判し、その上、スペースX社内の電子メールのフィルター機能に「blue」と「origin」を加えるようにした。

スペースXのロケット再利用の特許をベゾスが持っていた

アマゾンの米特許8678321の発明者にはベゾスの名前が書かれている。

「宇宙ロケットの海上着地と関連するシステム及び手法」と題されるこの特許の内容は、打ち上げたロケットを地球に戻して回収、再利用することを特許化したものだった。ブルーオリジンが2010年に出願していた。

これぞスペースXがファルコン9で実現した「ロケット再利用」そのものだった。

そもそもスペースXは、2008年に打上げを成功させたファルコン1の設計ではロケット再利用を盛り込んだエンジン構造になっていて、ベゾスの特許を知ったマスクは激怒した。

「そんなことは50年も前から言われていた。独創的でもないし、映画にも出てくる」と批判を展開し、スペースXは反証例を提示してベゾス特許の無効を申し立てた。

最終的には、スペースXの主張が認められた。

マスクにあれこれケチを付けるベゾス
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