コピーライターの澤田智洋さんは、子供が先天性の障害で目が見えないと知ったことをきっかけに、障害のある人たちと一緒に仕事をするようになった。そんななか、彼らが着る服の着脱やサイズ合わせに困っていることを知る。澤田さんの働きかけで始まった「041(オールフォーワン)」プロジェクトとは──。

※本稿は、澤田智洋『マイノリティデザイン 弱さを生かせる社会をつくろう』(ライツ社)の一部を再編集したものです。

麻痺でボトムの着脱が難しい、サイズがない...

アパレル企業のユナイテッドアローズと協働した、「041(オールフォーワン)」というプロジェクトを紹介します。

障害のある友人たちと話していると、日常的に着る服にさまざまな課題を抱えていることに気づきました。「麻痺があるのでパンツやスカートの着脱が難しい」「目が見えないから、どうコーディネートすればいいのかわからない」「自分に合うサイズの服がない」──。どうにかこの問題を解けないか。

そんな中、知人を介してユナイテッドアローズとのご縁をいただきました。

初顔合わせの場で、「実は......」と友人たちの課題を共有したところ、みなさん「え?」「そうだったんですね......」と思いがけない様子です。というのも、「衣服についての基本的な課題はおおかた解決されていると思っていた」と。

ペルソナよりも、実在する「ひとり」のために

それを聞いて、今度はより詳細に障害のある友人たちから服にまつわる声を拾い、「障害者が抱える、服の6課題」と題した資料にまとめました。当事者たちがいまだに、「着脱」「サイズ」「冷え」「素材」「フォルム」「デザイン」という課題に悩まされている、という事実をまとめた内容です。そしてユナイテッドアローズのみなさんに、こうご提案しました。「ターゲットやペルソナを設定するのではなく、実際に存在する『ひとり』を起点に新しいファッションを開発しませんか?」。

そして、こうお願いしました。「御社のようにブランド力があり、広く知られるアパレル企業が、たったひとりの障害者のためにものづくりをすれば、きっと世の中に大きなインパクトをつくれる。なにより、障害者たちはこんな課題を抱えていて、これを解決できるのはみなさんしかいない。みなさんの力が必要なんです」。

資料を前に、ユナイテッドアローズのみなさんはこう言ってくれました。「知ったからには『やる』以外の選択肢は考えられませんね!」。

一点もののスーツを仕立てるかのようだった

そこからの、ユナイテッドアローズの動きは桁違いのスピードでした。

社内に一斉送信で「このプロジェクトに参加したい人は手をあげてください」とメールを流すと、すぐに十数人のメンバーが集まったそうです。しかも、普段は縦割りのセクションを超えて、デザイン部門、パタンナー部門、生産管理部門、素材を調達する部門などから、まさにオールスターチームが出来上がったんです。

こうして始まったプロジェクトの名前は、「041 FASHION」。041は「ALL FOR ONE」を意味します。

「だれかのため」「ターゲットのため」ではなく、服に切実な課題を抱える6名を開発の起点として、それぞれに対して「ひとりのため=オールフォーワン(041)」の服づくりを行うことになりました。

その「ひとり」のうちのひとりが、関根彩香さん。脊椎損傷によって12歳から車イス生活をしています。車イスを使いはじめてから、ほとんどスカートをはかなくなったそうです。「着脱しづらいし、車輪に巻き込んでしまう可能性がある」から。「オシャレをしたい」とたまにスカートを買ってみても、結局着られないまま「友人に譲ることを繰り返していた」と言います。

通常業務の合間をぬって開発は進みました。試作品ができては関根さんにはいてもらい、意見を聞いてまた改良する。このサイクルを何度も丁寧に重ねました。まるで、オートクチュールで一点もののスーツを仕立てているかのように。

たったひとりのニーズが新しい「美」を生み出す