第3に、新型コロナウイルスの感染爆発がイギリス経済に大打撃をもたらした。OECDの推計によれば、イギリスの昨年のGDP縮小率は、主要国の中ではアルゼンチンを除けば最悪だ。

こうした現実を考えると、イギリス企業が政府にEU市場への復帰を強く求めるようになる日も遠くないだろう。1990年代のスイスもそうだった。

イギリスの外交官は今後しばらく、イギリスがEU市場の一部セクターに参加して現在の通商協定を補完できるよう、交渉を続けることになりそうだ。そして1990年代のスイスの外交官と同じように、市場へのアクセスと引き換えにEUの規則に従うことに同意せざるを得ないだろう。

少なくともスイスの場合、取引をしたかいはあった。EUとの新たな合意で、スイス企業はEU市場へのアクセスを獲得し、2002年にはEUとの間で労働者の自由な移動が認められた。スイス経済はようやく回復を遂げ、2003年以降のGDP成長率は欧米諸国で3番目の高さだ。

では全て解決かと言われれば、そうではない。「スイス版ブレグジット」から28年がたった今も、EUをめぐる問題はスイス政治で最も大きな対立を招く。理由は2つある。

第1に、スイスとEUの関係がいずれ安定するという考えは幻想でしかなかったこと。世界は変化を続け、新しい経済セクターが生まれ、利害も変化する。2002年の合意の意味を維持するためには、継続的な内容の見直しが必要なのだ。

スイスは1992年以降、EUとの交渉を絶え間なく続けねばならなかった。今後のイギリスとEUの関係も同様だろう。

第2に、入念に練られた通商協定があるからといって、社会の対立がなくなるわけではないこと。論争に勝った側は、その論点を利用し続けようとする。スイスの主要紙や政治家は今も、EU反対論を再燃させるため世論をあおる新しい材料を探し出している。

EUを悪者に仕立てる

つまり今後数十年にわたり、イギリス政治でもEUとの関係が中心議題となり、他の重要課題に光が当たらないことが予想される。長い目で見れば、そこで失われるものこそ、ブレグジットがもたらす最大の損失になるかもしれない。

それに加えてイギリス人は、EU残留派も含め、EUをパートナーではなく対立相手と見なすようになるだろう。

EU復帰どころか
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