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デ・ニーロ(右)やぺシなど老優たちがびっくりするほど若返って見える COURTESY NETFLIX

オープニングの長回しや刑務所での食事シーンなど、本作には『グッドフェローズ』と似たシーンが多くある。だが『グッドフェローズ』が若者の成長を描いたのに対し、『アイリッシュマン』は老いてなお生かされている殺し屋の悲哀を描く。そもそもフランクには、最初から暴力や組織に対する幻想もない。

それでも彼は、なぜか労働組合幹部であり闇社会の大ボスであるジミー・ホッファに引かれていく。ホッファを演じるのは、デ・ニーロの盟友アル・パチーノ。上映開始から1時間ほどで出てくるが、さすがの怪演である。

ホッファの用心棒となったフランクは、これまで以上の信用を獲得し、これまで以上に危険な役目を仰せ付かるようになる。そして最後には、ホッファをも殺してしまう。

背負ってきたものの重み

そのクライマックスの前に挿入されるのがホッファとフランクの家族の交流だ。ホッファのお気に入りはフランクの娘ペギー(アンナ・パキン)だが、頭のいい彼女は、仕事の時間が不規則で夜遅くに出掛けることの多い父が怪しげな世界に足を踏み入れていることに気付いていた。

ちなみに、この作品に登場する女性たちは概して影が薄い。この点に批判が出るのは覚悟しておくべきだろう。しかしフランクがその長い人生において、妻や娘たちとほとんど心を通じていなかったという重大な事実を、この存在感の希薄さが浮き彫りにしているのも事実だ。

複雑な回想を幾重にも積み重ねて一人の男の人生を描くには、きっと3時間半でも足りなかったに違いない。なにしろ本作の主人公は長く生きてきた男、愛する人のほとんどよりも長く生きてしまった男なのだから。

フランクの人生がその語りのリズムに合わせて大きくも小さくもなる(特定の日が妙に詳しく回想される一方で、何十年もの時間があっという間に過ぎることもある)表現手法は、チャーリー・カウフマンの『脳内ニューヨーク』に通じるものだ。あの映画も『アイリッシュマン』同様、老いと喪失をめぐる考察で物語を締めくくっていた。そしてどちらも、主人公の背負ってきた人生の重みをずっしりと感じさせる。

3時間半の上映時間があっという間に過ぎるとは言うまい。しかし編集で削っていいシーンがあったかと言えば、一つもなかったと思う。撮影は名手ロドリゴ・プリエトだし、BGMの選択や時代考証も完璧だ。

時は流れ、往年の「グッドフェローズ」も既に老境に入った。そして私たちも、いずれは年を取る。

THE IRISHMAN

『アイリッシュマン』

監督/マーティン・スコセッシ

主演╱ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ

ネットフリックスで配信中

©2019 The Slate Group

<本誌2019年12月24日号掲載>

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『アイリッシュマン』最終予告編