実際、討論会では、複数の候補がウォーレンの極端な主張に異論を唱えた。インディアナ州サウスベンド市のピート・ブーティジェッジ市長は、「なぜあなたが、民間保険を廃止しなければ、国民皆保険を実現できないと言うのか理解できない。1億5000万人のアメリカ人が現在加入している保険を捨てろと言うのか」と問い掛けた。

ベト・オローク前下院議員は、「分割するべき企業名を具体的に挙げるのは、大統領または大統領候補の仕事ではないと思う」と語った。大富豪のトム・スタイヤーは、民主党は「税金や企業の分割でなく、民間のイノベーションや競争を活用する方法を語るべきだ」と主張した。

極端な主張ゆえに、「異なる声に耳を貸さない頑固者」というレッテルを貼られることは、ウォーレンにとっても危険だ。「あなたのアイデアが唯一のアイデアではない」と、エイミー・クロブチャー上院議員はウォーレンにクギを刺した。

オロークはもっと辛辣だった。「ウォーレン上院議員は、国民を鼓舞することよりも、懲らしめたり、対立させたりすることに力を入れているように見える」。ブーティジェッジも、「党派的な争いを永遠に続けることだけが唯一の道だというウォーレン上院議員の姿勢には、私も賛同できない」と語った。

ウォーレンは、こうした批判に「ショックだ」と驚きを隠さなかった。それはあながちパフォーマンスではないのかもしれない。なにしろ彼女はこれまで、もっぱら熱狂的な支持者に囲まれて選挙活動を展開してきた。厳しい突っ込みを入れるジャーナリストのインタビューを受けることはめったにない。

討論会後、メディケア・フォー・オールには増税が必要なのではないかと問われたとき、ウォーレンは、「国民はそんなことは気にしていない」と切り捨てた。「私と写真を撮るために行列する人たちは、(税金ではなく)費用の話をする」。だが、彼らはウォーレンの支持者であって、民主党が獲得しなければならない有権者ではない。

もしかするとウォーレンには、秘策があるのかもしれない。民主党の大統領候補に決まったら、「分別ある進歩主義者」に軌道修正するのかもしれない。

だが、少なくともこの前の討論会では、その気配は感じられなかった。そこにいたのは、宗教的保守派を相手にせず、間違ったことを堂々と言い放ち、アメリカ先住民の血を引いていると主張したことについては言葉を濁す「いつものエリザベス・ウォーレン」だった。

©2019 The Slate Group

<本誌2019年10月29日号掲載>

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