誤算のリスク

アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のシンクタンク、エミレーツ・ポリシー・センターのエブテサム・アルケトビ所長は「米国の選挙結果によってトランプ氏には和平合意の必要性が高まったが、イランにとって交渉が容易になったわけではない」と指摘する。

アルケトビ氏は、重要なのはテヘランがこの状況をどう解釈するかになると指摘。「イランが、トランプ氏は合意を必要としているが、どのような合意でも良いわけではないと理解すれば、戦争終結に向けた真の機会が生まれる可能性がある。しかし、今回の結果を米国が弱腰になったとイランが受け止め(強気になる)ならば、逆にトランプ氏を新たな軍事的エスカレーションへと駆り立てるかもしれない」と懸念する。

湾岸諸国は今回の選挙が戦争終結への道を開くことを望んでいるが、どのような条件でも構わないわけではない。ホルムズ海峡の航行の自由が軽視される合意や、イランが船舶通行に対して通行料や政治的条件を課せるような枠組み、あるいは湾岸諸国が軍事的脅威にさらされたままの状態を容認する合意は、一時的な平穏をもたらすだけで、新たな危機の火種を残すことになる、というのがアルケトビ氏の分析だ。

一方、イランでは指導部がトランプ氏の敗北を歓迎したものの、複数のイラン高官によると、トランプ氏が敗北を挽回するため軍事攻撃に踏み切る可能性に備え、イランは引き続き厳重な警戒態勢を維持している。最高指導者モジタバ・ハメネイ師は「降伏へのいかなる傾斜も許されない」と述べ、ホルムズ海峡を巡る要求を緩和する意思がないことを示唆した。

UAEの政治アナリスト、アブドルハレク・アブドラ氏は、現在より大きな危険は米国やイスラエルではなくイラン側にあるとの見方を示す。同氏によれば、イラン指導部は長年にわたり自国の力を過大評価し、米国やイスラエルの軍事力を過小評価してきた。その思考様式は今も変わっておらず、新たな戦闘再開の可能性を排除すべきではないという。

同氏は「イランは現在、これまで以上に誇示できる材料を得ている。もし再び戦争へ引きずり込まれるなら、それはネタニヤフ氏でもトランプ氏でもなく、テヘランの指導者たちによるものかもしれない。彼らは、トランプ氏が弱体化し、ネタニヤフ氏は終わったと誤認し、さらに事態をエスカレートさせる恐れがある」と警告した。

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