[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は29日、クリスティーヌ・ラガルド総裁が任期満了を待たずに2027年2月7日付で退任すると発表した。これを受け後継総裁の選考が本格的に始動した。選考は今後数週間で決まるとみられている。

以下が後継総裁の有力候補だ。

◎クラース・ノット氏

金融経済学の専門家であるノット氏(59)は、2011―25年にオランダ中央銀行の総裁を2期にわたって務めた。それ以降は主に顧問の役職や、ECB次期総裁を目指した活動に時間を費やしてきた。

ECB理事会のメンバーとして政策金利決定に携わったオランダ中銀総裁在任中の14年間は、マリオ・ドラギ前ECB総裁の景気刺激策に対する反発が次第にあらわになった時期と、後継のラガルド氏と完全に足並みをそろえた時期とに大別される。

現実主義者のタカ派とみなされるノット氏は、ユーロ圏が分裂の危機に瀕した欧州債務危機の時期にECBの理事会に名を連ねるようになった。ユーロを守るために「必要なことは何でもする」と公約したドラギ氏に当初は懸念を示していたが、最終的には決定的な瞬間だったと評するようになった。

しかしインフレ率が10年間にわたって目標の2%を下回った状況下で、ドラギ氏が物価上昇を目指して大規模な景気刺激策を打ち出すと、ノット氏は反対姿勢を示すようになった。

当初は非公開の議論での批判にとどまっていたが、19年後半に理事会メンバーの3分の1が反対する中でドラギ氏が新たな景気刺激策を強行すると、対立が表面化。通常なら全会一致で決める合議制のECBとしては前例のない亀裂があらわになった。

ラガルド氏がECB総裁に就くと、ノット氏はECBで主流派のポジションに復帰した。ただ22年にインフレ率が急騰すると、早期から金融引き締め政策に転じるように提唱した点は異なる。

ノット氏は国際的な金融規制基準を策定する金融安定理事会(FSB)の議長も21年から25年まで務めた。

◎パブロ・エルナンデス・デコス氏

金融政策でハト派姿勢だとみなされているデコス氏(55)は、中央銀行の国際的な統括機関である国際決済銀行(BIS)の総裁を務めている。2018―24年にはスペイン中央銀行総裁を務めた。

スペイン中銀総裁の在任中は、超低インフレから始まり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を経て、暴走するインフレを抑制するために利上げを進めることを迫られた激動の時期だった。

デコス氏はスペイン中銀のチーフエコノミストも歴任した。スタッフから総裁まで上り詰めたのは異例で、スペイン中銀で調査に当たる職務の地位向上に成功したことを反映している。

同僚らはデコス氏のことを実務的なエコノミスト、あるいは浮動票投票者と評する。常に自らの主張を裏付ける豊富な証拠やデータを提示し、教条主義を避けてチームプレーを重んじることで知られている。

トランプ米大統領の批判にさらされた前米連邦準備制度理事会(FRB)議長のジェローム・パウエル氏を世界の主要中央銀行総裁数人が公然と支持した際、デコス氏は主要な調整役を務めたとされる。

デコス氏は銀行規制の国際基準を策定するバーゼル銀行監督委員会委員長を務めたことも、国際的な知名度を高めるきっかけとなった。

◎ヨアヒム・ナーゲル氏

ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁を2022年から務めているナーゲル氏(60)は、ドイツとECBとの関係を根本的に変えた。

イェンス・ワイトマン前ドイツ連銀総裁がドラギ前総裁時代のECBと長年にわたって公然と対立していたのに対し、穏健なタカ派のナーゲル氏は強硬な発言を控え、協調路線に回帰した。

同僚らによると、経済学の博士号を持つナーゲル氏は自身の「一線」を明確に示しつつも、他の問題については妥協できる人物であり、在任中に重要な政策決定に反対したことは一度もないとされる。

ECBが長年求めてきた銀行破綻処理時の共同預金保険制度の創設も支持しており、ドイツ政府が反対してきたのとは一線を画す。

ナーゲル氏はECBの独立性を強く擁護し、ECBに対する政治的批判を退けてきた。最近は極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の提唱内容の一部が自滅的であり、投資家を遠ざける恐れがあると反発した。

ナーゲル氏はドイツの社会民主党の党員であり、BISおよびドイツ復興金融公庫で要職を歴任した。

3人の候補者の中で、ナーゲル氏が選ばれる可能性は最も低いとみられている。

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