野ウサギに関するある調査によると、ある繁殖シーズンの生後28日間の死亡率は50パーセントだった。この調査は、ヤブノウサギの数が激減した唯一最大の理由は、農作業だと明言している。

そういう理由から、野ウサギが自然界で3、4年以上生きるのはまれなことだという。野ウサギの寿命はたいてい、長くても1年ほどだとされているから、そばにいる子ウサギの運命を思うと胸が痛む。

体重がかなり軽かったことを思うと、私が見つけたときは、せいぜい生後1、2日だっただろう。このまま生き延びれば、8カ月のうちに身体は大人の大きさになるが、1歳になるまではまだ子ウサギだとされていて、4歳になるまで体重は増え続ける。

野ウサギは「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」──黄昏時(たそがれどき)の生きもの──だと学んだ。

要するに、捕食動物から身を隠しやすい明け方や夕暮れや夜間にとくに活動的になる。はたと気づいたのは、昼間に子ウサギを起こして庭に連れ出すという以前の日課は、私が真夜中にたたき起こされ、「外を散歩しろ」と迫られるようなものだった、ということ。

生後6週間になる4月半ばには、子ウサギの毛が急に抜け始めた。始まりは背中に一つ、コイン大のハゲができて、灰色の下毛が透けて見え、まるでハゲ始めたかのように見えたこと。一時期は、虫に食われたみたいなひどいありさまだった。

ある日、うちを訪れた兄にもそう指摘された。兄はしゃがんで庭の階段にいる子ウサギに挨拶すると、「この子、本当に大丈夫?」と聞いた。「もちろん」とすぐさま弁明したけれど、実のところ、かなりみすぼらしく見えた。

そのうち背中や脚、ついには頭からも柔らかな灰色の毛がどんどん抜け落ち、冬のコートが脱げてくると、とくに胸のあたりに──キツネのような──やや赤みを帯びた茶色のすべすべした毛が生えてきた。

クロエ・ダルトン(Chloe Dalton)
作家、政治顧問、外交政策専門家。英国の国会ならびに外務・英連邦省に10年以上勤務し、数多くの有名政治家のスピーチライターなどを務めた。現在はロンドンと郊外の家の二拠点生活を送っている。デビュー作となった本書は、発売と同時にサンデー・タイムズ(英)、ニューヨーク・タイムズ(米)のベストセラーリスト入りした。ウェインライト・ナチュラルライティング賞を受賞し、2025年度ウィミンズ・プライズ(ノンフィクション部門)候補に選ばれたほか、ヘイ・フェスティバル(ウェールズの芸術・文学祭)、『サンデー・タイムズ』『タイムズ』『フィナンシャル・タイムズ』『スペクテイター』『エコノミスト』『iNews』『TIME』の年間ベストブックに選ばれた。

 
野ウサギを育てる

『野ウサギを育てる 小さな命との奇跡の日々』

 クロエ・ダルトン[著]長澤あかね[訳]

 光文社[刊]

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