Mike Scarcella

[ワシントン 8日 ロイター] - 米ファストフード大手マクドナルドを相手取った反トラスト法(独占禁止法)違反を巡る集団訴訟が今週、提起された。同社が人工知能(AI)を活用したツールを使ってメニュー価格を実質的に操作している、というのが原告の主張だ。企業が新しいテクノロジーを利用して価格協調を行い、消費者に不利益を与えているとの疑いを提起する事例がまた1つ増えた。

こうした訴訟は、ホテル、不動産、医療保険など幅広い業界で既に起こされており、対象がハンバーガーチェーンにも広がった形だ。現在、全米各地で係争中だが、裁判所の判断はまちまちだ。

マクドナルドの今回の訴訟では、米国内約1万4000店舗の大半が独立したフランチャイズオーナーによって運営されているという同社の事業モデルが焦点となっている。原告側は、本来であれば各店舗が自由に価格競争を行うべきであるにもかかわらず、マクドナルドは独自の「プライシングエンジン(価格設定システム)」を利用しなければフランチャイズ契約を失う可能性があるとして圧力をかけたと指摘。その結果、ビッグマックやフライドポテトなどの価格が押し上げられ、何百万人もの消費者が高い料金を負担させられているとしている。

一方、マクドナルドはロイターに対し、フランチャイズ加盟店が個別に価格を決定しており、「AIがビッグマックやその他メニューの価格を設定しているわけではない」と反論した。

訴訟は、ロイターが先に報じた「マクドナルドがAIを活用して価格決定を支援している」という内容の記事を受けて提起された。シカゴ連邦地裁に提訴された集団訴訟では、同社がこの技術を用いて「フライドポテトの最後の1本に至るまで、消費者の財布から搾り取ろうとしている」と批判されている。

<新技術で増す疑惑>

AIなど最新のソフトウエア技術によって、企業が価格設定を瞬時に共有し、価格戦略を調整できるようになったいま、裁判所は数十年前の独占禁止法をどのように適用すべきか頭を悩ませている。

これまで裁判所は、価格設定などの経営判断にアルゴリズムを利用すること自体は違法ではないとの見解を示してきた。だが、競合企業同士がそうしたツールを利用して意思決定で足並みをそろえ、その結果として消費者負担が増す場合には反トラスト法違反と認定されてもおかしくない。

米テネシー大学ロースクールの反トラスト法専門家モーリス・スタック教授は、新しい技術によって競合企業は互いの価格戦略を把握しやすくなり、違法な協調行為を行っているとの疑いを招きやすくなっていると指摘する。現在係争中の多くの訴訟では、企業が共通の第三者ベンダーを通じて価格データを共有していたとされる。

スタック氏は「価格設定をアルゴリズムに委ねる企業が増えれば、価格協調が生じる事例も増えるだろう」と述べた。

これまでの司法判断は一様ではない。7月にはフィラデルフィアの第3巡回区控訴裁判所(高裁)が原告側を支持し、アトランティックシティーにあるカジノホテルが共通の価格設定ソフトを利用して宿泊料金を引き上げたとする訴訟の継続を認めた。同裁判所は「過去には技術的な制約によって企業間の協調は難しかったが、現在のアルゴリズムはそうした障壁を克服する能力を持っている」と説明した。

逆にサンフランシスコの第9巡回区控訴裁判所は昨年、ラスベガスの大手ホテルが共通の価格推奨ソフトを利用したことを理由に提起された訴訟について、宿泊料金上昇だけでは反トラスト法違反を立証するには不十分として訴えを退けた。

最も長期化している案件の1つが、不動産向けソフト会社リアルページを巡る訴訟だ。同社はプライベートエクイティ企業トーマ・ブラボー傘下にあり、集合住宅オーナーが同社のツールを利用して家賃を不当に引き上げたと訴えられた。米司法省が提起した訴訟を含め、一部案件では和解が成立しているが、多くはなお係争中だ。

リアルページは反トラスト法違反を否定しているが、先月にはニューヨーク州によるアルゴリズム価格設定ツールの利用禁止法の適用を差し止める判断を連邦裁判所から勝ち取った。担当判事は「ソフトウエアによって支援されているという理由だけで、通常の商業活動を州が禁止することはできない」と判断した。

<フランチャイズの価格協調が問題に>

マクドナルドに対する今回の訴訟は、同一ブランドのフランチャイズ加盟店が共通の価格設定技術を利用し、消費者に過大な料金を負担させていると主張する初めてのケースとみられる。これまでの多くの訴訟では、異なるブランドの企業同士による価格協調が問題とされてきた。

ニューヨーク大学ロースクールで反トラスト法を教えるダニエル・フランシス氏は「加盟店がどの程度独立して価格を決定できるか」が訴訟の重要な争点になるとみている。

フランシス氏は、店舗は別々のオーナーによって運営されていても同じフランチャイズの加盟店である以上、メニューや販売方法について一定の調整が行われるのは自然なことだと指摘。「これらの店舗同士が現実的な意味で競争しているとは言い難い。実際には他のファストフードチェーンと競争しているのであり、そこにアルゴリズムが加わったとしても本質は変わらない」と述べた。

訴状によると、マクドナルドの米国内店舗の95%は独立したオーナーが運営しているが、同社は加盟店が価格設定システムの推奨に従っているかを監視している状況にある。原告側は、そうした加盟店への影響力行使が消費者の負担増につながっているとの理由で、数百万人規模の消費者を対象とする集団訴訟を通じた損害賠償を求めている。

これに対してマクドナルドは「当社の技術は価格設定を自動化したり、加盟店間で調整したり、価格を固定したりするものではない。加盟店が自らの事業と顧客のために最適な判断を行えるよう支援するものだ」と主張した。

訴訟に関与していない反トラスト法専門弁護士ジェフリー・シンダー氏は「アルゴリズムによる価格設定を巡る訴訟は、技術革新に法制度がどこまで対応できるかを試している。AIに対する社会的な警戒感が高まる中で、今後こうした訴訟はさらに増えていくだろう」と述べた。

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