量子力学について、物理学の門外漢が最も理解しにくいのは、「1つのものが同時に2つの状態にあり得る」という概念だ。

目に見えないほどの速さで2つの状態を行き来しているということではない。観測によって、どちらか一方の状態に定まるまでは、あいまいな状態にある。

この矛盾は、量子コンピューティング分野がどういう状態にあるかをめぐって何十年も続いてきた議論を表現するのに、まさにぴったりだ。

量子コンピューティングは、コンピューターに何ができるかを根本から変える技術になる──この点はノーベル賞委員会も米国家安全保障局(NSA)も、シリコンバレーの半分も認めてきた。その一方で、常温核融合や少し前までのAIと共に、「いつまでも実現は30年先と言われ続ける夢の技術」の枠に入れて差し支えないものでもあった。

従来型の古典コンピューターは、情報をビットに保存する。ビットはオンかオフ、1か0という、2つの状態しか取らないスイッチだ。

量子コンピューターが使うのは量子ビット(キュービット)だ。1でもなく0でもない「重ね合わせ」(こちらの記事を参照)の状態を取ることができる。数を増やすほど、同時に保持できる状態は猛烈な勢いで増える。数百の量子で、観測可能な宇宙の原子数を上回る可能性を表現できる。

実用化は今年から?