主流派による「反対」が皮肉に映る理由
左派党が「収用」ではなく「社会化」という言葉を好むのもそのためだ。「収用」には旧ソ連による資産接収や戦後の東ドイツの土地改革という負の記憶が付きまとう。左派党は、対象住宅の価値を独立機関が算定し、その評価額に基づく補償を市が全額払うと強調している。
実現可能性を認める専門家もいる。中道左派系シンクタンクIMKは新たな報告書で、社会化によって家賃規制の対象となる住宅が恒久的に増え、低・中所得層がベルリンで暮らし続けられる環境づくりに寄与すると結論付けた。
左派党以外の左派もベルリンの試みがほかの都市や分野へ広がることを期待している。国政レベルのSPDの一部にも電力・ガス供給の再国有化を支持する声があり、交通や医療への応用を唱える団体もある。だが、構想が頓挫する可能性は残る。SPDベルリン支部のシュテフェン・クラッハ共同代表などSPDの主流派が抵抗しているからだ。
皮肉なのは、基本法に収用条項を盛り込むよう強く求めたのが戦後初期のSPDだったことだ。将来の社会化に道を残すことが目的だった。だがその後、SPDは旧来型の社会主義から次第に距離を置くようになった。
その忘れられていた条項を左派党と、志を同じくする社会運動がよみがえらせようとしている。戦後SPDがかつて思い描き、現状に不満を抱く多くのドイツ国民が今なお夢見る社会主義を実現するために。
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