ただし、反ネタニヤフ勢力(通称「変化ブロック」)にも追い風が吹いているわけではない。早い段階で選挙協力に動いたヤイル・ラピドとナフタリ・ベネット両元首相の陣営は、当初の勢いを維持できず失速。
無党派層が少ないイスラエルでは選挙の「風」が吹きにくい。事実、21年に首相となったベネットが率いた政党「ヤミナ」はわずか7議席しか獲得していない。参加の見返りに少数政党が大きな要求をしがちなことも連立の障害になる。
この複雑な連立方程式の鍵を握るのが、アラブ系政党と人口の約2割を占めるアラブ系市民だ。4年前の選挙で約53%だったアラブ系の投票率は、今回は60%を超えるという予測もある。
ユダヤ系の投票率が前回並みと仮定すると、理論上はアラブ系の投票率が約5ポイント上がるごとに1議席を積み増し、影響力が強まる計算だ。
ネタニヤフ政権で警察を統括する国家治安相に極右政治家イタマル・ベングビールが就任して以降、アラブ社会での殺人事件の犠牲者が過去最高に達するなど、アラブ系自治体などから強い批判が出ている。これが投票行動にどう結び付くかも焦点となる。
さらに9月23日、与野党で構成する中央選挙管理委員会は、アラブ系政党「ラアム」と「合同リスト」を選挙失格とする決定を多数決で下した。最高裁で覆される可能性が高いが、ネタニヤフ勢力にとってはアラブ系政党に敵対的な姿勢を見せることで、右派層の支持を固める狙いがある。
現在のイスラエルにおいて、アラブ系政党を連立に加えることは、心情的に容易な選択ではない。しかし、反ネタニヤフ勢力がアラブ系政党なしで過半数の61議席に到達する可能性は低く、連立交渉がまとまらない限りはネタニヤフ暫定政権が続く。