Curtis Williams
[ヒューストン 1日 ロイター] - トランプ米大統領が韓国による540億ドルの投資をアラスカ州の液化天然ガス(LNG)事業に振り向ける方針を打ち出したことで、年間2000万トンの輸出能力を計画する「アラスカLNG」に改めて注目が集まっている。ただ建設費は米メキシコ湾岸の同規模施設と比べて2倍を超える見通しで、採算性が課題だ。
トランプ氏は9月30日、韓国による総額2000億ドルの投資計画の一環としてアラスカLNGへの投資方針を発表した。一方、韓国政府は同事業への資金拠出はまだ決定しておらず、まず商業的な実現可能性を検証するとの立場を示した。
エネルギーコンサルティング会社ポーテン・アンド・パートナーズのビジネスインテリジェンス責任者、ジェーソン・フィア氏は「問題は、アジアの買い手が供給安定性と引き換えに割高な価格を受け入れるかどうかだ。これまでのところ、そのような兆候は確認できていない」と指摘した。
事業を主導するグレンファーン・グループは、アラスカLNGの総事業費を445億─545億ドルと見積もる。年間生産能力100万トン当たりでは約22億─27億ドルに相当し、これまで米国で計画されたLNG輸出事業の中で突出して高い水準となる。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻後に承認された一連の米国のLNG事業は、年間生産能力100万トン当たりの建設費が平均10億ドル程度か、それ以下にとどまっている。シェニエール・エナジー の「コーパスクリスティ・ステージ3」拡張事業は、年間1050万トンの能力増強に約80億ドルを投じる計画で、100万トン当たりでは約7億6000万ドル。ベンチャー・グローバル の「プラクミンズLNG」は年間2000万トンの能力に対し、投資額が約210億ドル。ネクストディケード の「リオグランデLNG」とウッドサイド・エナジー の「ルイジアナLNG」も、年間生産能力100万トン当たりの建設費は10億ドル前後だ。
米メキシコ湾岸のLNG輸出基地は、テキサス、ルイジアナ両州やアパラチア地域のシェールガスを供給する広範なパイプライン網を利用できる。だがアラスカLNGでは、北部のブルックス山脈と北極海に挟まれたノーススロープから南部ニキスキまで、全長800マイル(約1287キロ)のパイプラインを新設する必要があり、建設費は132億─169億ドルと見積もられている。
さらに天然ガスを南部へ輸送する前に処理する大規模施設をノーススロープに建設しなければならない。グレンファーンの最新試算によると、ガス処理施設に77億─92億ドル、液化施設に236億─284億ドルを要する。
ラピダン・エナジー・グループの世界ガス・LNG調査部門ディレクター、アレックス・マントン氏は、同事業について「投資に必要な商業的な基準を満たせない可能性がある」との見方を示した。
グレンファーンはコメント要請に直ちに応じなかった。同社のブレンダン・デュバル最高経営責任者(CEO)は9月30日、トランプ氏の発表について、アラスカLNGの最終投資決定と建設を加速するために「必要な資本を集める助けになる」と述べた。
ただ計画の支持者は、アラスカの地理的な優位性を強調。日本や韓国、台湾などアジアの主要輸入国までの輸送時間が米メキシコ湾岸からより大幅に短く、輸送費を抑えられるとしている。
調査会社イースト・デーリー・アナリティクスのジャック・ワイクセル氏は「アジアは安定した確実なガス供給を必要としており、そのためなら割高な価格を受け入れる可能性はある」と認めつつも、同じ地域に位置するカナダのLNG事業がアラスカLNGより有利になる場合もあり得るとくぎを刺した。