Michael Holden
[ロンドン 30日 ロイター] - 英国内の情報収集を担う情報局保安部(MI5)は30日、中国の研究機関「中国通用技術研究院(CGTRI)」が中国当局のスパイ活動のために、人工知能(AI)などに関する英国の学術研究に資金を提供しているとして、国内の大学や研究者らに異例の警告を発した。
MI5は「スパイ活動に関する警告」で、英国を拠点とする研究者100人超が、CGTRIから資金提供を受けた研究に参加していたと指摘。CGTRIについて、中国の情報機関である国家安全省(MSS)と「非常に強い関係」があると付け加えた。
さらに「CGTRIの主な目的は、MSSのスパイ活動に必要な技術能力を直接向上させる学術研究に資金を提供することだと確認した」と説明した。
英国の研究者が、AIやサイバーセキュリティー、秘密通信システム、ステガノグラフィーなどに関するCGTRIの資金提供プロジェクトに参加していたとされており、「こうした活動は中国国家安全省のスパイ活動を支援し、英国の国家安全保障に脅威をもたらす」という。ステガノグラフィーはメッセージや物体の中に情報を隠す技術だ。
MI5が独自にこうした警告を一般向けに公表するのは初めて。中国によるスパイ活動を巡っては英国側から相次いで疑惑が指摘されており、安全保障上の懸念と、対中関係改善を進める英政府の姿勢との間にある緊張を改めて浮き彫りにした。
在英中国大使館は疑惑について「想像上のもので、完全な捏造だ」と反発。大使館の報道官は「根拠のない非難に断固反対し、英国側に厳正な申し入れを行った。英国の情報機関に対し、虚偽の情報を広め、中国と英国の教育交流や研究協力を損なうことをやめるよう求める」と述べた。
一方、ジャービス安全保障担当相は国内の全大学の責任者に書簡を送り、教職員らが中国側の組織との関係を打ち切るよう求めたと明らかにした。
MI5は、多くの研究者や研究機関が、CGTRIと中国国家安全省との密接な関係を知らず、善意で協力していた可能性があると分析した。その上で、今後も関係を継続すれば、外国によるスパイ活動や敵対的な国家活動への対処を強化するため2023年に成立した英国の国家安全保障法に基づき、訴追される恐れがあると注意喚起した。
ジャービス氏は声明で「今回の警告は、中国の情報機関がわれわれの研究者の専門知識や研究成果から秘密裏に利益を得ようとし、英国と同盟国の国家安全保障を損なっている実態を明らかにした。大学や研究機関が発展を続けるためには国際的な連携が不可欠だが、われわれが直面する脅威から国を守るため、断固とした措置を取る」と強調した。