Howard Schneider Michael S. Derby Ann Saphir

[ワシントン 30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の監察機関は30日、首都ワシントンにあるFRB本部2棟の改修工事で約10億ドルの費用超過が生じた問題について、連邦刑法違反を疑う合理的な根拠や職務上の不正は確認されなかったとする報告書を公表した。ただ事業の監督には重大な不備があったと指摘した。

トランプ大統領は報告書を受け、FRB前議長のジェローム・パウエル氏に理事辞任を改めて要求した。改修事業の総費用は約24億ドルに膨らんでおり、トランプ氏はこれまで費用超過を材料にパウエル氏への批判を強めてきた。

監察機関は報告書で「評価のいかなる時点においても、連邦刑法違反があったと信じる合理的な根拠は認められず、司法長官への付託を必要とする事案はなかった。改修事業の管理上の不備を指摘し、監察総監法に基づく是正措置を勧告したが、職務上の不正は確認しなかった」と説明した。

司法当局は一時パウエル氏の捜査に乗り出していたものの、裁判所が司法省の同氏に対する召喚状を無効と判断したことなどから、捜査を打ち切ってFRBの監察機関に問題を負託していた。

パウエル氏は報告書についてコメントを拒否した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)への投稿で、パウエル氏について「少なくともFRB理事を辞任させるべきだ」と主張。建物すら管理できない人物に高金利政策を任せるべきではないとの趣旨で批判し、辞任しない場合は「汚職または無能」を理由に米政府が最高レベルで提訴すべきだと付け加えた。またトランプ氏は、ブランチ司法長官に報告書を精査して対応を判断するよう指示したと明らかにした。

5月にパウエル氏の後任としてFRB議長に就任したケビン・ウォーシュ氏は、事業管理に関する監察機関の勧告に従うと表明。これまでに発注された費用の正確性や規則への適合状況を検証するため、独立監査人を起用する方針を示した。

もっとも政府の大型事業では費用超過が珍しくない。現在進められているホワイトハウスの宴会場改修でも、トランプ政権の予算は当初の見積もりから倍増し、少なくとも4億ドルとなっている。

議会の反応は党派で分かれた。上院銀行委員長を務める共和党のティム・スコット議員は「インフレがあったとしても、FRBには資源を慎重に管理し、議会に対する説明責任を果たす義務がある」と指摘した上で、費用超過の度合いを「甚だしい」と批判し、厳格な監視を行う考えを示した。

これに対して同委員会の民主党トップ、エリザベス・ウォーレン議員は、報告書によってパウエル氏に対する大統領の「魔女狩り」を再開する根拠がないことが証明されたと述べた。

トランプ氏は、2017年末に自らが指名したパウエル氏に対して、18年以降に金融政策を巡る批判を開始し、特に利下げを進めないとして繰り返し公然と不満を表明。2期目の政権発足後は、FRB本部の改修費膨張が新たな攻撃材料となった。豪華な設備への浪費が事業費を当初計画より数億ドル押し上げた、というのが政権幹部や一部共和党議員らの主張だ。

しかしパウエル氏は、費用増加はアスベスト除去など予想外の問題に加え、資材費や人件費が想定を上回ったことや、大規模な地下工事が必要になったことなどが原因だと説明。これまで監察機関に事業と費用を改めて調査するよう要請していた。

そうした中で今回の報告書は、政権側が問題視してきた大理石や水景施設、庭園テラスといった設計要素について、費用超過に「重大な影響を与えていない」と結論付けた。一方、事業管理を巡っては広範な問題を指摘。FRBは当初、請負業者側が費用超過の責任を負う「保証上限価格」方式による契約を想定していたが、実際には上限価格が設定されないまま工事が進んだ。事業担当者が下請け契約を相次いで発注し、事業費と工期が膨らんだという。

パウエル氏は議長退任後もFRB理事にとどまっている。4月に議長として最後に開いた記者会見では「この調査が透明性と最終的な決着をもって完全に終了するまで理事会を去らないと述べてきた。その考えに変わりはない」と表明していた。

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