[ロンドン 30日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は30日、イラン紛争の再激化や人工知能(AI)関連の債券発行増加を挙げ、金融システム内で相互につながる脆弱性が顕在化するリスクが高まっていると警告した。

英中銀の金融安定政策委員会(FPC)は、原油・天然ガス価格の上昇を受け、債券利回りが2008年以来の水準に上昇したと指摘した。

金融システムと株式市場はこれまでのところ強靭(きょうじん)性を示しているものの、急激な調整の危険性がくすぶっていると警告。金融リスクに応じて水準を調整する「カウンターシクリカル資本バッファー」を2%に据え置いた。

FPCは四半期会合の議事要旨で、「金融システムの相互に関連する脆弱性が顕在化する可能性は高まっている」と指摘。「具体的には、紛争の再激化とそれに伴う原油、天然ガス、石油製品の価格上昇が、負の供給ショックを一段と長引かせている」とした。

<ベイリー総裁、AIリスクに懸念>

FPCの議長を務めるベイリー英中銀総裁は、FPC議事要旨と同時に公表したAIリスクに関する寄稿で、最先端AIのリスクへの懸念を詳述し、規制強化の前に「導入の前後に実施する厳格なモデル検証」が必要だと指摘した。

「いずれ、より正式な規制の枠組みが整備される可能性は十分にある。しかし、規制策定から始めるのは適切ではない。まず理解と検証を進め、確実に介入できるポイントを定める必要がある」と記した。

FPCは、AI関連の債券発行の「急増」により、資本市場がAIの動向に左右される度合いも高まったと指摘した。モルガン・スタンレーが9月上旬に示した推計によると、世界のAI関連債券発行額は約4500億ドルと、2025年の2倍に達した。

AI関連株と半導体株は7月に急落したものの、市場機能は秩序を保った。ただ、バリュエーションが依然として高い中、より大きなショックが発生すれば、一段と急激な価格調整につながりかねないと英中銀は警告した。

AIシステムが安全措置を回避する可能性を巡り、一連の事案が政策当局者の懸念を強めている。7月にはオープンAIのAIエージェントが管理された試験環境を抜け出し、AI企業ハギング・フェイスに不正侵入した。

英中銀は「こうした動きにより、AIの進歩がサイバーリスクや業務運営上のリスクを高める可能性があるとの委員会の評価が一段と裏付けられた」とした。

<銀行レバレッジ規制と英国債レポ市場改革>

英中銀は、銀行のレバレッジ規制と英国債レポ市場のルールの変更について、27年初めにより詳細な案を示すと表明した。英国債レポ市場では、トレーダーが金利変動による利益を狙うほか、投資家が保有債券を利用して一時的に現金を調達している。

FPCは7月、銀行に総資産に対して一定比率以上の自己資本を保有するよう求めるレバレッジ比率規制について、その影響を緩和する方針を示した。

変更案に関する市中協議は27年初めに開始する。英中銀は、これにより「英国債レポ市場の強靭性を高める措置の策定と実施を引き続き進める重要性が増す」とした。

ブリーデン副総裁は7月、英国債レポ市場の規制について「何もしないという選択肢はない」と述べた。金融危機時に同市場が原因で債券取引が滞るリスクが残っているためだ。

英中銀のデータによると、英国債レポ市場の純借入額は計約2000億ポンド(2700億ドル)。英中銀は、ヘッジファンドのレバレッジがここ数カ月、高水準ながら安定して推移したと説明した。

英中銀は、20年のコロナ禍と、22年にトラス首相(当時)の大型減税策が招いた市場混乱(トラスショック)で市場介入を余儀なくされた経緯を踏まえ、25年に規制強化の初期案を示した。

ただ、金融業界はこれらの案に反発している。ブリーデン氏は、中央清算の利用拡大など一部の改革には「数カ月ではなく、数年かかる可能性が高い」と述べた。

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