Kristina Cooke Ben Kellerman
[14日 ロイター] - 米国における移民の逮捕件数がこの数カ月間で急増している。背景には移民・税関捜査局(ICE)と地方法執行機関の協力強化、人物の追跡や処理のための技術活用の拡大、および連邦機関同士のデータ共有強化がある。
しかし、ロイターが米政府の暫定データを検証したところ、2026年夏の大規模な一斉摘発キャンペーンはそれに比例した強制送還者数の増加にはつながらなかった。トランプ大統領の掲げる大量送還目標には、法的手続きや移送面での制約が立ちはだかっている。
暫定データによると、8月の逮捕件数は約5万1000件と、過去最高を3カ月連続で更新した。一方、強制送還者数はおおむね横ばいで、1日当たりの平均は約1200人にとどまった。
送還データ・プロジェクト(DDP)が情報公開請求を通じて政府から入手し、ロイターが分析した逮捕者数のデータによると、5月の逮捕者数は約1万9000人少なかったにもかかわらず、1日当たりの強制送還者数はほぼ同水準だった。
現職および元職の計5人の政府当局者は、このような乖離(かいり)が生じているのは、取り締まりの対象者が変化しているためだと指摘する。DDPのデータによると、逮捕者の中には刑事上の有罪判決や起訴歴がなく、国外退去命令も受けていない人が増えている。
摘発された人々の多くは、亡命申請や他の法的請求が係属中だった。つまり、権利を放棄して自発的に出国することに同意しない限り、直ちに国外退去させることができなかった。
元当局者らによると、利用可能な航空機の不足や、受け入れ国による制限もトランプ氏の強制送還への意欲を阻んでいる。
ホワイトハウスのローレン・ビス報道官はロイターの質問に対して「これは事実に反する」とし、「トランプ氏の強力な移民取り締まり政策のおかげで、300万人の不法滞在者が米国を去った」とコメントした。
<拡大する一斉摘発>
ここ数カ月間の全国的な取り締まりは、カリフォルニア州ロサンゼルス、イリノイ州シカゴ、ミネソタ州ミネアポリスでの過去の作戦ほど大々的ではなかったものの、対象地域はより広範囲に及んだ。
トランプ氏は6月、自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」でICE職員に対し「史上最大規模の大量送還計画」の実現に全力を挙げるよう命じた。
現職および元職の当局者によると、ホワイトハウスはICEに対し、1日当たり3000人を逮捕する目標を達成するように圧力を強めている。
一方、国土安全保障省(DHS)はロイターへの声明で「逮捕に関するノルマは存在しない」と述べた。
トランプ政権は引き続き「最も悪質なケース」に対処するための摘発に焦点を当てていると主張している。ただDDPのデータによると、7月の逮捕者のうち犯罪歴のある人は4分の1未満にとどまった。この割合は24年12月には60%近くに達していた。
ICEは、空港では運輸保安局(TSA)から提供された情報に基づき、過去にビザ(査証)の滞在期限を過ぎた人物を標的にしている。その後に亡命申請したり、米国民と結婚して合法的な在留資格を得る道が開かれていたりしても例外ではない。ロイターが入手した政府の内部データによると、TSAからの情報提供を受けてICEに逮捕された人は、6月上旬までに1200人を超えている。
ドロレス・メンドーサさん(62)、ロベルト・アバロスさん(64)夫妻は先週、カリフォルニア州の家族を訪問後、アラバマ州バーミンガムの空港で拘束された。夫妻は15年に観光ビザで入国し、娘が乳がんで亡くなった後は米国にとどまり、米国籍の孫3人を養子として育ててきた。
夫婦はともに前科はなく、就労許可を取得している。2人の身元を保証できる立場にある一番上の孫のマービンさん(22)を通じて、米国での永住権申請の審査を受けている。
マービンさんによると、15歳と16歳の弟は祖父母が拘束されてしまったことで苦しんでいるという。15歳の弟は「部屋からあまり出てこなくなった」とし、16歳の弟は「とにかく憤りでいっぱいになっている」と語った。
夫妻の弁護士は、この拘束が違法だとして連邦裁判所に提訴した。
<航空機の不足>
弁護士を雇う余裕のない人々の中には、収容施設で長期にわたって足止めされているケースもある。
ヤハイラ・モランさん(50)は、家庭内暴力の被害者として犯罪被害者ビザの申請中であるにもかかわらず、5カ月にわたって収容されている。
モランさんは9月上旬、手続きを断念し、母国ニカラグアへの帰国を申し出た。だが、強制送還を待つために収容されたままだ。
たとえ強制送還の対象であっても、手続きは容易ではない。受け入れ国との調整や、収容施設の広大なネットワークにまたがる移送が必要となる。
バイデン前政権下(民主党)で高官だったブラス・ヌニェスネト氏は「送還対象者を航空機に乗せるのは非常に難しい。利用可能な航空機の実数は、従来から大きな制約となっていた」と明かした。
トランプ政権は昨年、強制送還用にボーイング737型機を6機購入する契約を結んだ。しかしながら、事情に詳しい関係者によると、それらの航空機は依然として連邦航空局(FAA)の検査を受けており、まだ運用されていない。
元当局者らによると、移送に使われる既存の航空機は運送や法的な問題、外交上の障壁、あるいは受け入れ国が人数を制限しているため、定員に達しないまま出発することが少なくないという。
人権団体ヒューマン・ライツ・ファーストによると、ハイチ北部の沿岸都市カパイシャン息の最近の送還便では、搭乗者がわずか57人にとどまった例もあった。