Valerie Volcovici Georgina McCartney Ernest Scheyder

[ワシントン/ヒューストン 14日 ロイター] - 米環境保護局(EPA)は14日、バイデン前政権が導入した石炭火力およびガス火力発電所向けの二酸化炭素(CO2)排出規制を撤廃する規則を発表するとともに、電力部門に関する包括的な温室効果ガス(GHG)排出規制の枠組みを全面撤回する方針を示した。電力部門のGHG排出をEPAが規制する権限は大気浄化法の下では認められていないとの見解に基づいており、将来的な気候変動対策を目的とした発電所規制も封じる狙いがある。

南部テキサス州ヒューストンで開催される20カ国・地域(G20)エネルギー相会合のタイミングに合わせて発表された今回の措置は、トランプ大統領が進める気候変動政策の見直しの一環。政権はこれまでの気候政策がエネルギー生産を阻害してきたと主張している。

EPAのゼルディン長官は記者会見で「大統領の指導の下で米国民は連邦機関に常識的な対応を求めている。それは新たな発電インフラを建設するため、不必要な規制を削減することを意味する」と述べた。

米国では電力部門が温室効果ガス排出量の約4分の1を占め、運輸部門に次ぐ第2位の排出源となっている。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、国内電力部門の排出量は昨年、前年比4%増加した。

トランプ政権は今年6月、バイデン前政権下で策定されたCO2、水銀などの大気汚染物質排出を抑制する発電所向け規則の撤廃案を公表していた。前政権の排出規制は、2047年までに温室効果ガス排出量を10億トン削減することを目指したもので、気候変動対策の柱の1つだった。

この規則では、石炭火力発電所および新設の天然ガス火力発電設備に対し、今後10年以内に排出されたCO2を大気中へ放出する前に回収する設備の導入を求めていたため、太陽光や風力などのゼロエミッション電源の競争力を高める効果があるとされていた。

ゼルディン氏は、規則撤廃によって業界の直接的な順守コストを約3億7000万ドル削減できるとの見方を示した。

またエネルギー省のハウストベイト次官は記者団に、新たな規則によって石炭火力発電の活用が後押しされるとの見方を示した。米国では近年、より安価な天然ガスや再生可能エネルギーの普及を背景に石炭火力の利用が減少している。

ハウストベイト氏は「トランプ大統領は『美しくクリーンな石炭』に対する戦いを終わらせた。石炭は信頼性が高く、安価で安全保障上も重要だ」と強調した。

米大手電力会社で構成する業界団体エジソン電気協会(EEI)は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)を前提とした排出基準の撤廃を歓迎する一方、業界の予見可能性を確保するためEPAと協議を続ける考えを示した。

これに対して環境保護団体や公衆衛生の専門家らは、規制撤廃により莫大な環境・健康被害が生じると反発している。生物多様性センター気候法研究所の弁護士マギー・コールター氏は「国内の気候汚染の4分の1を占める排出を存在しないものとして扱うのは極めて無責任だ。今年の夏に見られたような猛暑や激しい嵐、大規模な山火事による被害や犠牲者がさらに増えるだろう」と批判した。

政策研究機関ポリシー・インテグリティ研究所の上級弁護士デナ・アドラー氏は「EPAは最近の分析でこうした被害を実質的にゼロと扱っている。自宅が焼失するリスクについて、損害額を正確に算定できないからコストはゼロだと言う保険会社のようなものだ」と述べた。

EPAが連邦レベルでの将来的な炭素排出規制を停止する方針を打ち出した後も、電力会社は各州が定める排出削減規則への対応を引き続き求められる。

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