<8月に米上院で可決されたロシアへの圧力を一気に強める制裁法案だが、その紆余曲折の推移からは米政治が内包する様々な対立関係を覗くことができる>
アメリカがロシアに新たな厳しい制裁をかけるのかが注目されている。法案はすでに8月上旬に上院で可決された。次は下院での審議だが、現在止まっているものの、目が離せない状況になっている。
アメリカのスティーブ・ウィトコフ特使とジャレッド・クシュナー特使が、今月5日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、8日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談を行った。この2人がウクライナを訪問するのは、戦争開始後初めてである。
なぜこのタイミングなのか。中間選挙のためのアピールも否定できないが、上院を通過した新たな「ロシア制裁法(通称)」を、圧力カードとして利用した交渉だった可能性は高い。この法案の推移は、現在のアメリカ政治のあらゆる対立関係が複雑に絡み合う、壮絶なドラマになっている。
標的にされる国は
昨年から議会で進められてきた「ロシア制裁法」は、8月7日に上院で86対11という圧倒的な賛成多数で可決。推進者は、7月に死去した共和党のリンジー・グラム(グラハム)上院議員だ。
共和党と民主党の党派を問わず強力な支持を得ることに成功した。ドナルド・トランプ大統領の後ろ盾も得ている。夏休みを終えて9月から下院で審議されることが期待されていたが、現在不透明な状態だ。
この法案は、ホワイトハウスがロシア産原油または天然ガスの輸入量上位5カ国に対して、新たな「二次制裁」を課すことを可能にするものだ。トランプ政権は、これらの国からアメリカに輸入されるすべての物品に最大100%の関税をかけることが可能になる。
標的にされる国はどこか。上位5カ国とはデータの取り方や時期などで差が生じるが、重要なのはこの条項には、「ある国の輸入量が、ロシアの天然ガス輸出量の15%未満であり、かつ輸入削減に向けて重要な措置を講じている国については適用除外」とする例外規定が盛り込まれたことだ。
そのため、「ほぼすべての欧州諸国、日本、韓国、トルコは事実上除外されることになる」、「その結果、大統領が権限を行使したら、アメリカの標的となり得る『唯一の主要市場』として残るのは中国とインドだけとなる」と、ワシントンD.C.に本部を置く著名なシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のレポートは述べる。