楠木:それが「寝かしておく」ということですね。自分の中にある「タグ」に引っかかったインプットが蓄積され、熟成し、変換されてアウトプットになる。コンセプトの創出には事後性がある。知的生産のフェーズを行ったり来たりしながら、ずっと考えているうちに、ある時ふっと出てくる。
振り返ってみると、あの時のあの変換が決め手だったと分かるのですが、考えている最中はそれがコンセプトの核になるとは気づいていない。Aを入力すればBが出るというような「リニア(線形)」な作業ではありません。いろいろと試行錯誤した後に、「自分が言いたかったことは、このコンセプトで全部まとめられるな」と後から気づく。
この非線形なプロセスをうまく扱うためにも、「あ、これはしばらく寝かしておいたほうがいいな」と放置するのが必要な局面もある。規律とゆとり、緊張と弛緩、その塩梅は重要なセンスです。効率一辺倒ではなく、「間」や「余白」を意識的につくるのが不可欠ですね。
楠木 建(経営学者 一橋大学PDS寄付講座・シグマクシス寄付講座特任教授)
専攻は競争戦略。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部専任講師、同助教授、ボッコーニ大学経営大学院客員教授、一橋ビジネススクール教授を経て現職。著書に『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』、『楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記』、『経営読書記録(表)(裏)』(いずれも日本経済新聞出版)、『絶対悲観主義』(講談社+α 新書)、『逆・タイムマシン経営論』(日経 BP、共著)、『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社、共著)、『室内生活 スローで過剰な読書論』(晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法』(文藝春秋)、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)ほか多数
山口 周(独立研究者、著作家、パブリックスピーカー)
1970 年東京都生まれ。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞 2018 準大賞、HR アワード 2018 最優秀賞(書籍部門)を受賞。他の著書に、『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『劣化するオッサン社会の処方箋』『仕事選びのアートとサイエンス』『コンテキスト・リーダーシップ』(いずれも光文社新書)、『ニュータイプの時代』『人生の経営戦略』(ダイヤモンド社)、『ビジネスの未来』(プレジデント社)、『武器になる哲学』(角川文庫)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』 (日経ビジネス人文庫)など。
ゲノム医療から「自分に合う治療」を探す時代へ[PLUS]手記「ステージ4のがんをクスリで治す」(ジャーナリスト・金田信一郎)
