市民が恐れる過酷な冬

約300万人のキーウ市民にとって最大の懸念は、冬の到来だ。ロシア軍の攻撃により、戦争開始以来たびたび停電や断水が発生してきたが、この10日間の攻撃激化からは今冬、さらに深刻な混乱が生じる可能性が読み取れる。

8月末のロシア軍の攻撃で自宅アパートが被害を受けたボフダンさん(29)は、壊れた建物を見渡しながら「この1年は本当に大変だった。今回の攻撃で分かる通り、さらに厳しくなっていくだろう。だからわれわれは引っ越すことにした」と語った。

前線では毎週、数百人規模の死傷者が出ているものの、戦況に大きな変化は見られていない。その一方で、ロシアとウクライナはここ数カ月、互いのエネルギー施設や物流拠点を標的とした激しい空中戦を繰り広げている。

国連によると、この戦争で確認された民間人の死者はこれまでに1万6000人を超え、その大半はウクライナ国内で死亡している。ロシア、ウクライナの双方は民間人を標的にしていないと主張しているが、キーウとその周辺地域では8月27日以降だけでも数十人の民間人が死亡した。

通勤や買い物も困難に

8月31日には、空襲警報が繰り返し発令された影響で、ドニプロ川によって分断された市内東西を結ぶ地下鉄の運行が停止した。市中心部の対岸に位置するオソコルキー駅の混雑したホームで2人の息子とともに警報解除を待っていた看護師で心理学者のユリアナ・オリイニクさんは「もう寝袋を持ち込んで、学校の近くの駅で寝泊まりした方がいいのではないかと考えている。昨年も学校生活は大変だったが、今年は正直どうしたらいいのか分からない」と話す。

市中心部へ向かう道路は渋滞し、バス停は人であふれ、多くの市民が職場への往復で長距離を徒歩移動している。

買い物も以前より難しくなった。大規模スーパーは空襲警報が鳴ると営業を中断するため、客は買い物の途中でも店外へ退避しなければならない。また物流網の混乱や倉庫への攻撃により、一部の乳製品が品薄となっている。

強まる対ロ強硬論