Alexandra Alper Nichola Groom
[ワシントン 4日 ロイター] - トランプ米政権が半導体供給網保護の一環として支援を目指していたドイツのワッカー・ケミーの米テネシー州にあるポリシリコン工場が閉鎖の危機に直面していることが分かった。同政権の新たな通商措置のために残る2社の顧客を失ったためという。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ワッカーは今後数週間以内に、約600人を雇用するテネシー州チャールストン工場の閉鎖の是非を判断する見通しだという。
ワッカーは「現時点で政策の影響を評価するのは時期尚早」としながらも、「現在の内容では米国製ポリシリコンの利用を実際に支援する仕組みになっていない」として政権側と協議を続けているとしている。ロイターの報道後、同社は「チャールストン工場を閉鎖する計画はない」とコメントした。
トランプ政権は8月6日、ポリシリコンから製造されるインゴット、ウエハー、太陽電池セル、太陽光パネルの輸入に対し、最低価格制度と関税を導入する方針を発表した。中国勢が支配する太陽光サプライチェーンへの依存を減らし、米国内製造を促進するのが狙いで、12月に施行する計画だ。
しかし、政策の適用対象は製品の製造国で決まり、材料として使用されたポリシリコンの原産地は問われない。このため、中国製ポリシリコンを使った製品と米国製ポリシリコンを使った製品が同じ扱いとなる。
業界関係者やアナリストは、この制度設計こそが最大の問題だと指摘している。市場調査会社ベルンロイター・リサーチによると、米国製ポリシリコンの価格は中国製の最大4倍に達する。新政策で輸入製品に関税が課されても、海外メーカーは引き続き安価な中国製ポリシリコンを調達することが可能で、米国製ポリシリコンへの需要増加にはつながりにくい。
ウッド・マッケンジーの調査アナリスト、エリッサ・ピアース氏は、「現在の制度設計では、通商拡大法232条関税が米国製ポリシリコン需要を押し上げるとは考えていない」と語った。
今回の問題は、トランプ政権の保護主義的な通商政策が、意図した産業支援につながらない可能性を示すケースとして注目されている。トランプ政権はこれまでにも鉄鋼・アルミニウム関税が米自動車メーカーのコスト上昇を招き、一時的に競争力を低下させた。
また、中国企業は太陽光向けポリシリコン市場で圧倒的な地位を築いているだけでなく、より高純度な半導体向けポリシリコン市場にも進出しつつある。このため、米国が半導体サプライチェーンを中国から切り離すという政策目標を達成できるかどうかにも疑問が生じている。
関税政策を支持する団体「繁栄する米国のための連合」のニック・イアコベラ氏は「国内製ポリシリコンが太陽光と半導体のサプライチェーンの基盤となることを明確に示さなければ、両産業を外国企業や中国のような競争相手に明け渡すことになる」と危機感を示した。
ワッカーはドイツの2工場を含めて計3つのポリシリコン工場を保有している。中国勢との競争激化で業績が圧迫されており、チャールストン工場で人員削減を昨年実施した。
ハーテル最高経営責任者(CEO)は米国が8月に政策を発表する直前、投資家に対して「通商措置が期待外れなら3工場は多すぎるかもしれない」と語っていた。