Samia Nakhoul

[イスタンブール 6日 ロイター] - 米国・イスラエルによるイラン攻撃が市場を揺るがし、中東ペルシャ湾岸地域をより大規模な戦争の瀬戸際に追い込んでから半年。米国がここにきて仕掛ける前例のない経済的圧力強化措置が生み出す流れは、イランにとって不利な方向へ傾きつつあるようだ。まさに米国は軍事力だけでは達成できなかった目標を、経済的な圧力によって実現することを目指している。

長年にわたって制裁を耐え抜いてきたイランだが、同国関係者や地域筋の話では、現在はイスラム革命以来の歴史の中でも最も厳しい締め付けの1つに直面している。米海軍による封鎖と強化された制裁措置で原油輸出は抑制され、外貨へのアクセスは制限され、経済のひずみも鮮明になってきた。

こうした圧力を背景に米国と周辺地域諸国は、経済的な苦境を深めさせることで、イランにホルムズ海峡の自由な通航を認めさせられると考えている。

その根拠は単純な計算に帰結する。つまりイランは相手に与えている損害よりも、自らが受けている経済的打撃の方が大きいということだ。原油輸出を締め上げる取り組みによってイラン政府の歳入は減少した一方、ホルムズ海峡での通航妨害は、イラン側が期待していたような世界経済への大きな衝撃を生み出せなかった。実際エネルギー市場は状況に適応し、代替供給も維持されている。

イラン問題の専門家アラシュ・アジジ氏は「力の均衡はややイランに不利な方向へ傾いている」と指摘するとともに、イランはホルムズ海峡を完全には封鎖できておらず、その結果として同海峡に対する影響力の一部を失いつつあると分析。米海軍による封鎖も「本当にイランに大きな打撃を与えている」と付け加えた。

アジジ氏は、イランが当初、海峡の混乱によって世界経済に大きなショックを引き起こし、その結果として米国を交渉の席に引き戻せると考えていたと説明する。だが「現実にはそうなっていない」と述べ、各国は状況に適応し、イランが地域や世界に経済的苦痛を与える能力には限界があることが明らかになったとの見方を示した。

もっとも複数の地域筋の見立てでは、この圧力が本当に譲歩を引き出すかどうかは依然としてはっきりしない。イランは米国の決意を揺るがすほどの代償を相手に強いることには失敗しているものの、制裁解除、凍結資産へのアクセス、そしてホルムズ海峡における自国の安全保障上の役割の承認といった要求を撤回する兆候はほとんど見せていない。

<締め付けに耐えられるか>

イラン政府の高官3人は、米国の圧力政策がますます耐え難いものになりつつあることを認めている。最新の措置によって、イランが外貨を確保したり、物資を輸入したり、経済を支えてきた国際金融ネットワークを利用したりする能力は大きく制限された。

イラン指導部が懸念するのは、物価高騰や貿易の停滞、家計への圧迫によって経済状況がさらに悪化し、過去に何度も同国を揺るがしてきた全国規模の抗議活動が再燃する事態だ。燃料や小麦など重要輸入品の不足も深刻な不安要素になりつつあるという。

ベセント米財務長官はこの戦略を「一撃目と二撃目を組み合わせた攻撃」と表現した上で「海上封鎖と史上最も厳しい制裁」を組み合わせていると説明。CNBCのインタビューで「この政策はイランで効果を発揮し、最終的には体制を崩壊させるだろう」と語った。

米国やイスラエル、そして一部の地域諸国の当局者は、こうした経済的圧力がイラン国内の混乱を引き起こし、指導部内部の亀裂を広げ、体制の統治力を弱めることで、最終的には政治的な変化につながる可能性があると期待している。

一方で経済的・軍事的圧力だけでイランの政治的崩壊を引き起こせるとの見方には懐疑的な声もある。イランのイスラム体制の不安定化を狙った過去数十年の試みが失敗してきたことや、イラン当局が反体制運動を抑圧してきた実績から、今回も体制が予想以上の粘り強さを示してもおかしくないからだ。

<最も現実的な合意案>

米国の中東外交交渉に長年携わってきたデニス・ロス氏は、米国がイラン経済の苦境を戦略的成功の証拠と捉えているかもしれないが、現実はそれほど単純ではないとくぎを刺す。

ロス氏によると、イランは依然としてホルムズ海峡を支配できる立場を証明しようとしているものの、武力行使の程度は慎重に調整しており、さらなるエスカレーションという選択肢も温存している。革命防衛隊は譲歩するよりも経済的苦痛に耐え抜き、相手の圧力をやり過ごせると考えている可能性があるという。

同氏は「イランはその耐久力という点で常にわれわれの予想を裏切ってきた」と述べ、経済的・軍事的圧力だけでイランを後退させることは難しいとの見方を示した。イラン国内の強硬派は、持久戦に持ち込めば最終的に目的を達成できると考えているかもしれないという。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員ブルジュ・オズジェリク氏は、イランの持久力は政府の経済的耐久力だけでなく、国民がどこまで苦境に耐えられるかにも左右されると指摘。「確かに経済的締め付けは国民的不満の拡大リスクを高める。しかし現時点では、戦時下の意識が国民の間にかなり強く浸透しているように見える。外国による軍事介入や民間人の犠牲、そして米国主導の国際秩序との文明規模の対立という認識が『イラン第一』という愛国的な支持や容認、あるいは単なる忍耐を支えている」と分析する。

こうした状況が生み出したのは、米国が当初想定していた以上に頑固な膠着状態だ。経済的圧力によって苦境は深まっているものの、イランの強大な革命防衛隊は、それを譲歩の理由ではなく、自らの交渉力を高めるための持久戦と位置付けていてもおかしくない。

複数の地域筋は、重要なのは「イランが苦しんでいるかどうか」自体ではなく「次の対立への転落を回避できるほど、譲歩を選ばざるを得ないレベルまで苦しんでいるのかどうか」だと訴える。

ロス氏は合意への最も現実的な道筋として、ホルムズ海峡の通航料を巡る問題に言及し、イランが通航税の要求を取り下げる一方、航行支援や安全保障、環境保護など正当なサービスに対する料金徴収権はイラン側として維持するという案を提示する。

このような取り決めであれば、双方が勝利を主張できる余地が生まれ、イランも屈服したように見せることなく歩み寄ることができる。ロス氏は「もしホルムズ海峡の再開通を発表できるのであれば、トランプ大統領は合意に応じるだろう」と予想した。 

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