Kentaro Sugiyama Takahiko Wada

[東京 28日 ロイター] - 食料品インフレの象徴だったコメが値下がり局面に入っている。家計負担を直接軽減する効果は限定的とみられるが、購入頻度の高いコメの値下がりは「値上げは当たり前」と受け止められてきた消費者心理や企業の価格設定行動に変化をもたらす可能性がある。

<コメ下落、前年比30%の可能性>

総務省が28日に発表した東京都区部の8月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合が前年比1.8%上昇と前月の1.7%から小幅に加速した。ただ、米類は14.2%下落し、2005年5月以来の大きな下げとなった。

米類は5月に前年比1.0%下落した後、6月は同6.0%、7月は同8.4%へと下げ幅を拡大してきた。前年産米の在庫調整などを背景に、小売価格の下落が続いている。

秋以降は、新米への切り替えに伴う店頭価格の動きに加え、前年同期にコメ価格が高水準だったことによる影響も大きくなる。みずほ証券の片木亮介マーケットエコノミストは「概算金(仮渡し金)の動向などを踏まえると、前年比では30%程度までマイナス幅が拡大する可能性があり、生鮮・エネルギーを除く総合(コアコア)の前年比を0.2%ポイントほど追加で押し下げるインパクトがある」と試算する。

コメ価格の下落は、加工食品や外食などを手掛ける企業の価格設定にも影響を及ぼす可能性がある。足元ではファミリーマートが一部おにぎりを値下げし、セブン―イレブン・ジャパンとローソンも9月から順次、対象商品を値下げする方針を打ち出した。

バークレイズ証券では、カレーライスや豚カツ定食、天丼などの外食品目にもコメ価格と一定の正の相関がみられると分析。「外食価格はコメ以外の食材費や人件費などにも左右されるものの、コメ価格の下落が価格据え置きや一部値下げを促す可能性がある」と指摘している。

<消費者心理への波及は>

ただ、家計の食料支出に占めるコメの比重には限りがある。中東情勢の影響による包装資材などのコスト上昇の広がりも予想され、どこまで食料品全体の価格上昇を押しとどめられるかは見通しにくい。サービス価格にも人手不足などを背景とした人件費の上昇圧力が残る。

それでも市場関係者が注目するのは、心理面への影響だ。この数年、消費者の間では「原材料価格の上昇による値上げはやむを得ない」と容認ムードが広がり、企業もコスト上昇を理由に価格転嫁を進めやすかった。

コメは購入頻度が高く、家計が価格変化を実感しやすい品目だ。昨年、大幅に上昇して食料品インフレの象徴となったコメが下落すれば、「物価は上がり続けるもの」という消費者の認識に変化が生じる可能性がある。

大和証券の末広徹チーフエコノミストは「値下げが久しぶりであればあるほど、値下げをした時のマインド面への影響は大きくなる」とみる。コンビニのおにぎりが200円というのはやっぱり高すぎる、というように、「インフレを受け入れる姿勢に懐疑的な見方が出てくるきっかけになるかもしれない」と話す。

こうした消費者心理や企業行動への波及、個人消費への影響は、金融政策を運営する日銀にとっても関心事だ。昨年8月と10月の展望リポートで、食料品価格の上昇の背景や個人消費への影響をBOXで取り上げ、詳細に分析した経緯がある。

日銀は現在、物価の上振れリスクへの警戒を強めており、中東情勢、AI(人工知能)関連需要、為替の変動が経済・物価に与える影響に特に注意している。コメ価格の下落は物価上昇率を押し下げる方向に作用するが、日銀内からは、ほかの品目の価格設定にどの程度波及するのか、緩やかな上昇が続く予想物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、見極めが必要との声が出ている。

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