バックルームズの恐怖は、二重の「迷子」の感覚にある
満たされない人生に意味を見いだしたいクラークは、これこそが生きる目的だとばかりにバックルームズの謎の解明に夢中になる。もちろん4chanの投稿を知る私たちは、悪い予感しかしない。
クラークの離婚話は映画版のオリジナルだが、パーソンズの結婚観はずいぶん月並みらしい。この部分はいささか型にはまった印象だ。
だが不安のメカニズムとバックルームズの恐ろしさの秘密なら、パーソンズは十二分に理解している。
バックルームズの恐怖は、二重の「迷子」の感覚にある。1つ目は現実から切り離される感覚だが、それだけではない。自分ばかりか助けに来た人も、右も左も分からない迷路をさ迷い続けるのだ。
その感覚をリアルに再現しようと、パーソンズは約2800平方メートルのセットを建設した。実際、撮影中にセットで迷子になる人が出たという。
理解を超える異世界に遭遇し、どこに得体の知れない何かが潜んでいるか分からない空間から出られなくなる。その恐怖を想像してほしい。
人によってはインターネット自体が、そうした空間なのかもしれない。
バックルームズが映画になったことで異世界はさらに身近になり、私たちがうっかり迷い込むのを待っている。くわばらくわばら。
BACKROOMS『バックルームズ』
監督/ケイン・パーソンズ
主演/キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスベ
日本公開は9月4日
曖昧すぎる目標、敵国の軽視、自国軍事力への過信……長期化・泥沼化したベトナム戦争との共通点